「【”死を冷静に受け入れれば、心は解放される。”今作は、ベトナム戦争従軍時に心に傷を負った兵士が帰国後、奇妙な幻覚に襲われる話、・・ではない・・。序盤から、ヒントは随所にあります。】」ジェイコブス・ラダー(1990) NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”死を冷静に受け入れれば、心は解放される。”今作は、ベトナム戦争従軍時に心に傷を負った兵士が帰国後、奇妙な幻覚に襲われる話、・・ではない・・。序盤から、ヒントは随所にあります。】
■地下鉄内で夢を見ていると、突然かつてのベトナムでの体験が蘇ったジェイコブ・シンガー(ティム・ロビンス)。
それ以来、奇妙で恐ろしい幻覚が夢うつつに、交錯するようになる。
自分の精神状態に危惧を抱いたジェイコブは、かかりつけの医師に相談しようとするが、その医師はすでに亡くなっていた。
◆感想
・映画タイトルが、ネタバレになっていると言えば、そうかもしれない。
・序盤から、ジェイコブ・シンガーが経験する事の数々に、ラストが見えてくるのは中盤位からだろうか。
1.クラブで、ホステスに手相を見て貰うジェイコブ・シンガーに、笑いながらホステスが言った言葉。”貴方、変わった手相をしているのね。貴方、もう死んでいるわよ。”
このシーンで、確信したかな。
2.ジェイコブ・シンガーが、同居人ジェジーと寝ていると思ったら、いつの間にか別れた妻サラや、ジェド、イーライ、そして車に轢かれて死んだ筈のゲイブが微笑んでいるシーン。
3.序盤から彼が街中で観る、不気味な人たちの姿はアメリカ軍がベトナム戦争従事者に対し、闘争本能教化のための薬の副作用で有ろう。
4.ジェイコブ・シンガーが高熱を出し、氷水を張った浴槽で奇跡的に”助かる”シーン。
5.そして、ジェイコブ・シンガーがベトナムに行った際に、軍に何かされただろうことを弁護士や当時の仲間と共に訴訟を起こそうとするも、最初は積極的だった彼らが掌を返したように、それを辞める姿。
6.ジェイコブ・シンガーが、何者かに車で連れ去らるシーン。
<ラストは、切なかったな。死んだ筈のゲイブが階段に座っており、ジェイコブ・シンガーは手を繋いで二人で神々しい光が差す階段を上って行くのである。
そして、その後に映されるベトナム戦争の救護班テントで安らかな顔で死んでいるジェイコブ・シンガーの姿。
テロップで流れる、アメリカ国防省が否定しているベトナム戦争従事者に対し用いられたとされる幻覚剤の名前。
今作は、ホラーテイストの作品ではあるが、国の為に戦った男の迷える魂が、天に召される様を描いた作品なのである。>