「権力なしでは自由になれない」猿の惑星 征服 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)
権力なしでは自由になれない
初鑑賞
『猿の惑星』シリーズ4作品目
72年公開作品
監督は『ナバロンの要塞』『最後の猿の惑星』のJ・リー・トンプソン
脚本は『007 ゴールドフィンガー』『じゃじゃ馬ならし(1966)』『続猿の惑星』『最後の猿の惑星』『オリエント急行殺人事件(1974)』のポール・デーン
時代は1991年
今となっては30数年前だが公開当時は近未来
ジーラとコーネリアスの息子マイロが成長し奴隷化された猿たちのリーダーとして反乱を起こし人間を支配する話
この頃はまだ喋れる猿はマイロのみ
マイロを匿っていたサーカス団の団長は尋問の末に転落死してしまう
新しい飼い主にシーザーと名付けられたマイロは人間たちに復讐を誓う
発想としては傑作になりうる素材だがそうはならなかった
そのトラウマが新シリーズによるリベンジに繋がっていくんだろう
宇宙飛行士が宇宙から持ち込んだウイルスで犬や猫が絶滅する世界
どっかで聞いた話だ
男女逆転の大奥に似ている
フィクションとはいえ馬鹿馬鹿しい
犬好き猫好きとして絶対に許せない
猿が人間を支配する仮定で犬や猫を滅ぼす必然性は微塵もない
犬や猫の代わりのペットとしてチンパンジーはあまりにも突飛だ
ターザンかマイケルか志村か
賢いから奴隷にするというもおかしな話し
第1作目の主要キャラが1人もいない
テイラーもジーラもノバもいない『猿の惑星』はもはや『猿の惑星』ではない
これにスペクトルマンが出て来たら『宇宙猿人ゴリ』とさほど変わらない
背広組の人間たちはそろって黒のスーツにノーネクタイ
70年代の人々が想像したファッションだがそうはならなかった
今もさほど意味を感じないネクタイなるものをぶら下げている
それが慣例だからだろう
トンマでも猿でもネクタイを締めてれば紳士として扱ってもらえる
知事の側近が黒人だが白人に比べ猿に理解ある
『猿の惑星』シリーズの猿は黒人を揶揄している説があるが黒人を猿に例えるのは強い抵抗感がある
奴隷化されたチンパンジーの動きがあまりにも変だ
俳優たちが悪いというより演出が悪い
演出家が悪いと俳優がどれだけキャリアを積んできてもそれを活かせない
演出家は現場のボスでボスに従えないなら降板するほかない
あの歩き方と両腕を振るあの動きだけでこれはB級どころかC級映画だ
本物のチンパンジーを登場させたのも興醒めだ
1作目は傑作で2作目3作目はまあまあだったが4作目は酷すぎる
平均的なレビュアーに比べたら自分は甘めかも知れないがこれは作品そのものが頂けない
おバカ映画として振り切れてもない
内容そのものは馬鹿馬鹿しいが男女逆転大奥は衣装代などカネはかけビジュアル的には良い
だがこれは見ためも良くない
映画comもYahoo!も全体的に評価は低いがFilmarksはそれらに比べ若干だが評価が高めになっている
猿たちと同じように自分は奴隷だと日頃から感じる者はこの作品に強く共感し高く評価してしまうかもしれない
自分はどうやらそうではないようだ
星0.5