サリヴァンの旅のレビュー・感想・評価
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【売れっ子コメディ映画監督が、社会派映画を撮りたくなり貧民の生活を経験した事で大変な目に合うが、その過程でコメディ映画の大切さに開眼する様を描いたシニカルスクリューボールコメディ。】
<Caution!内容に触れています。>
ー 今作は、ナント80年以上前の作品である。
途中までは売れっ子コメディ映画監督サリヴァン(ジョエル・マクリー)が、社会派映画監督になりたくて、お付の映画制作会社の連中が大型ロケバスで就いてくる中、貧乏旅行を途中で出会ったルビッチ監督を尊敬し作品に出たいと希望する女優志願の美女(ヴェロニカ・レイク)と共に行う。
で、無事に旅行を終えて、貧しき人たちにお金を配ろうと思ったら、頭を殴られてお金を取られ、挙句の果てに捕まって強制労働。
正に彼が望んだ貧乏で恵まれない人になるのだが、一方では彼の金を取った男が列車に撥ねられて、サリヴァンが死んだ事になってしまう。
で、彼は恵まれない人達と、彼らの唯一の愉しみである映画を観るのである。それは「ミッキーマウス」であった。その姿を見てサリヴァンはコメディ映画が如何に人を楽しませているかを再認識するのである。
死んでいない事を証明した彼は、悪妻が自分が死んだと思い再婚した事を知り、自分と旅を共にした女優志願の美女と、結婚して目出度し目出度しという物語である。ー
<今作は、尺が僅か90分の中で、一人の甘ったれたコメディ監督の愚かさと、可笑しさと、美女との出会いと彼女と旅をする中で、自分のコメディ映画監督の役割の大切さに気付くところまで描き、最後は見事にハッピイエンドで終わるという、正にジェットコースタースクリューボールコメディなのである。>
私はなぜ映画を作るのか
いかにも映画でござい〜という感じの機関車シーンから始まったので、これ大丈夫か?と思っていたら、それがちゃんと伏線と導入になっているという。機関車に乗って機関車に押し込まれて、身の詰まった作画作劇ができるようになる映画監督の物語。真面目なヒューマンストーリーを想像してたら、けっこう笑わしに来た!
お金を配るとはなんと傲慢な、と思ったが、それが裸一貫身にしみる体験に転じていく様子が面白かった。
貧乏修行
冒頭クレジットで喜劇人への謝辞が告げられる。
”いつでも私たちを笑わせてくれた人たちへ
国や時代を問わずすべての香具師、道化師、芸人たちへ
疲れた心を癒してくれた彼らにこの映画を捧げる”
ビバリーヒルズの豪邸に暮らす若手の映画監督が娯楽映画より社会派のシリアス・ドラマ(オー・ブラザー!)を撮りたいと悩み始める、”貧乏なんて知りもしないのに作れるか”との幹部の諫めに貧乏体験の放浪の旅を思いつく、ストイックな話かと思ったら、いきなり苦行でなく徐々に深みにはまるプロットは秀逸。主役は映画監督、色を添えるヒロインは夢の叶わぬ女優志願だし映画作りが主題だから映画への思い入れも半端ない。
無声映画の頃から爆走する機関車は活動写真の大スターだった。冒頭から007のアバンタイトルばりの機関車の上での格闘シーンから終盤の教会での映画上映、作品はなんとプルートとミッキーマウスのアニメーション(1934)だった、束の間、囚人たちも黒人牧師も童心に返り大笑い。
冒頭の謝辞からすればチャップリンあたりなのだろうが許可が取れなかったそうだ、だとすると謝辞はあてつけの意味もあったのだろうか・・。
劇中に登場した新作「オー・ブラザー!」は同タイトルで2000年にコーエン兄弟によりオマージュされました。冒頭とラストをハリウッドの重役たちとの本音トークで括ったところは「マジェスティック(2001)」を思い出しました。
現代劇顔負けのカーチェースもありペーソスあふれる笑いや人情劇など、映画の魅力のエッセンス、軌跡へのリスペクトに溢れています、映画好きにはたまらない楽しい映画でした。
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