サリヴァンの旅のレビュー・感想・評価
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私はなぜ映画を作るのか
いかにも映画でござい〜という感じの機関車シーンから始まったので、これ大丈夫か?と思っていたら、それがちゃんと伏線と導入になっているという。機関車に乗って機関車に押し込まれて、身の詰まった作画作劇ができるようになる映画監督の物語。真面目なヒューマンストーリーを想像してたら、けっこう笑わしに来た!
お金を配るとはなんと傲慢な、と思ったが、それが裸一貫身にしみる体験に転じていく様子が面白かった。
貧乏修行
冒頭クレジットで喜劇人への謝辞が告げられる。
”いつでも私たちを笑わせてくれた人たちへ
国や時代を問わずすべての香具師、道化師、芸人たちへ
疲れた心を癒してくれた彼らにこの映画を捧げる”
ビバリーヒルズの豪邸に暮らす若手の映画監督が娯楽映画より社会派のシリアス・ドラマ(オー・ブラザー!)を撮りたいと悩み始める、”貧乏なんて知りもしないのに作れるか”との幹部の諫めに貧乏体験の放浪の旅を思いつく、ストイックな話かと思ったら、いきなり苦行でなく徐々に深みにはまるプロットは秀逸。主役は映画監督、色を添えるヒロインは夢の叶わぬ女優志願だし映画作りが主題だから映画への思い入れも半端ない。
無声映画の頃から爆走する機関車は活動写真の大スターだった。冒頭から007のアバンタイトルばりの機関車の上での格闘シーンから終盤の教会での映画上映、作品はなんとプルートとミッキーマウスのアニメーション(1934)だった、束の間、囚人たちも黒人牧師も童心に返り大笑い。
冒頭の謝辞からすればチャップリンあたりなのだろうが許可が取れなかったそうだ、だとすると謝辞はあてつけの意味もあったのだろうか・・。
劇中に登場した新作「オー・ブラザー!」は同タイトルで2000年にコーエン兄弟によりオマージュされました。冒頭とラストをハリウッドの重役たちとの本音トークで括ったところは「マジェスティック(2001)」を思い出しました。
現代劇顔負けのカーチェースもありペーソスあふれる笑いや人情劇など、映画の魅力のエッセンス、軌跡へのリスペクトに溢れています、映画好きにはたまらない楽しい映画でした。
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