「爆速復讐劇」殺人地帯U・S・A 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
爆速復讐劇
どういう邦題なんだよ…という疑問はさておきとんでもない展開力の映画だった。人間関係を説明するためのまどろっこしい言語コミュニケーションの代わりに閃くのは突発的な暴力。
暴力を振るう/振るわれるという「人間関係の結果」を真っ先に提示してしまうことで、かったるい会話シーンをポンポンとすっ飛ばしていく。
冒頭で示される「父親殺しの犯人を殺す」という目的がわずか十数分で達成されてしまう展開の速さにはちょっと笑ってしまう。獄中で仇の情報を集めるとか、仇に会うまでにさまざまな苦難を乗り越えるとか、いくらでも面白そうなことができるのに、一直線に殺害フェーズに入る。しかも主人公は残りの2人の仇の名前を聞き出す際にファーストネームしか聞かない。
因果の連鎖としての映画のためにリアリズムをいとも簡単に手放してしまうあたりがフラーのハリウッド映画作家としての強度だなあと思う。
冒頭の不憫描写から絶対使い捨てのキャラクターだろ、と思っていた主人公の叔母が最終盤まで物語を牽引するメインキャラとして活躍し続ける意外さもよかった。ラストシーンでハンドル握ってるとこなんかバカみたいにかっこいい。
胸を撃たれた主人公がふらつき、絶命するというノワール映画の様式美もしっかり踏襲されている。プライベートプールで最後の仇を殺し終えた主人公を、床に倒れていた下っ端がバァン!と撃つ。主人公は胸を押さえながら屋外に出る。雨が降ってる描写なんか全然なかったのに地面がビッショビショになってるのもノワール映画すぎる。
主人公が最期に辿り着いたのは他ならぬ父親が撲殺されたあの路地裏。因果は巡る、的な教条主義もまたノワール映画のお約束だ。残された女たちの身にもなってくれ(泣)