日本人の勲章

劇場公開日:

解説

「あの高地を取れ」のドア・シャーリーが1955年に製作した異色西部劇で、ハワード・ブレスリンの原作から「底抜け最大のショウ」のドン・マクガイアが脚色、「拳銃魔」のミラード・カウフマンが脚本化し、「海底の黄金」のジョン・スタージェスが監督に当たった。イーストマンカラー色彩の撮影は「裸の拍車」のウィリアム・C・メラー、「幌馬車隊」のアンドレ・プレヴィンが音楽を担当した。出演者は「折れた槍」のスペンサー・トレイシー、「裸の拍車」のロバート・ライアン以下、「奥様は芳紀17才」のアン・フランシス、「ホワイト・クリスマス」のディーン・ジャガー、「遠い国」のウォルター・ブレナン、「皇太子の初恋」のジョン・エリクソン、アーネスト・ボーグナインなど。

1955年製作/81分/アメリカ
原題または英題:Bad Day at Black Rock
配給:MGM映画会社
劇場公開日:1955年5月5日

ストーリー

西部の片田舎ブラック・ロックに、4年ぶりで特急列車が止まった。降客は左手のない男ジョン・マクリーディ(スペンサー・トレイシー)。彼はこの奥のアドビ・フラットに住む日本人駒古を尋ねて来たのだ。しかし、彼の行先をきいた村人たちの態度は、何故か警戒するような素振りだった。村のボス、スミス(ロバート・ライアン)は、戦争中駒古はよそのキャンプに強制移住させられたきり帰ってこないと言った。マクリーディがホテルの管理人ピート(ジョン・エリクソン)の妹リズ(アン・フランシス)からジープを借りてアドビ・フラットへ行って見ると、駒古のいた小屋は焼き払われており、そのあとに野花が咲いていた。彼の戦場の体験は、野花の咲くところは墓だと教えた。その帰途、彼のジープはスミスの手下コーリーの運転する車に妨害をうけた。身辺に危険を感じ、この町を去ろうと思っても汽車は翌日でなければ通らないし、バスのある隣町へ行くにも32マイルも離れているのだ。郡警察にSOSの電報を打とうとしたが、スミス一味に握りつぶされた。せっぱつまった彼は、ピートからようやく事情を聞き出すことに成功した。真珠湾急襲の翌日スミスは志願したがはねられた、彼はやけ酒をあおり皆をそそのかして駒古の小屋に火を放った、そしてころげ出た駒古を射殺した――。マクリーディは、イタリア戦線で、駒古の息子が戦死したおかげで自分が助かり、その息子に贈られた勲章を届けに来た、とピートと葬儀屋のドクに告げた。この話に良心の目ざめたピートは、妹のリズに、マクリーディを逃がすように頼んだ。だが、スミスの情婦であるリズは、スミスに内通し、マクリーディを乗せた車を淋しい山中に停めた。崖上に銃を持って現れたスミスは、無惨にもまず証人のリズを射殺し、次いでマクリーディを撃った。ジープのかげに身をひそめたマクリーディは、空ビンにジープのガソリンを入れ、ネクタイを導火線に利用してスミスに投げつけた。スミスは火ダルマになって死んだ。――翌日、この寒村にまた特急が止まった。乗って去ろうとするマクリーディに、ドクは、われわれの良心の灯とするために日本人の勲章を贈ってくれと言った。

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映画レビュー

2.0もう少しメリハリがあればなぁ

2023年6月11日
PCから投稿

出だしの砂漠地帯ぽい部分を列車が走る映像がいいですねぇ~!何かパニック映画的なスピードで先が楽しみなスタートでしたが、その後は探り探りの展開で派手なシーンがないため退屈に思えたのが正直な感想です。

 人が少ない、周りに建物も少ない、まるで秘境駅に片腕の主人公が降りるため4年ぶりに停車。リーダー的存在のロバート・ライアンを中心に「あいつはこんな田舎に何しに来たんだ?」と探ろうとする。
 紳士的な主人公は、殺されて家が焼かれていた光景を見ても紳士的だったが、探られてケンカ売られて、また探られてケンカ売られて、この繰り返しで少しずつイライラ。。。彼らからしたら戦争の影響で日本を恨んでるのに、会いに来て勲章を渡そうとしたもんだから気に食わないってことですかね。はぐれて俺達なりに静かに暮らしてるのに邪魔するなって心境でしょう。違ってたらすみません。

タイトルに釣られて観た、あまり詳しくない自分でも「あっこの人、見たことある!」て役者さんが沢山いましたので往年のファンからすると待望のDVD化だと思います。

また、設定を戦後にしたそうです。
西部劇ぽい景色と建物なのに、服装は現代と一緒のカジュアル系。帽子は皆さんかぶってる。この中途半端なファッション・位置付けが新鮮に思えた。

田舎暮らしへの憧れだったり、集落の事情とか映画と関係ないんだけど、広大な景色に魅了されて観始めた自分には、最後に映った建物の少なさに目が行きました。

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はむちん2

5.0長引くコロナ禍、中国との新冷戦の始まり アジア人差別は米国でも欧州でも広がっているといいます いまこそ本作とダニエル・イノウエのことを私達は知り、どう行動すべきなのか考える時であると思います

2022年1月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

原題はブラックロック町の厄日という意味
それを邦題「日本人の勲章」としたのは見事です

なぜ主人公マクリーディは右腕がないのか?
なぜイタリア戦線で負傷したとわざわざ彼に語らせるのか?
何故、日本人の勲章なのか?インディアンとか黒人の方が米国なら一般的ではないのか?

そこに疑問をもって本作をご覧頂きたいと思います

1955年公開なのにカラー作品
スペンサー・トレイシー主演
脇役にはアーネスト・ボーグナインなど良い俳優達が固めています
つまり、大作ではないもののそこそこ力の入った作品ということです

しかもトレイシーはアカデミー主演男優賞に輝き、監督賞、脚色賞もノミネートされている程ですから高く評価されている作品といえます

本作はジョン・スタージェス監督の出世作と言って良いと思います
OK牧場の決斗、ゴーストタウンの決斗、ガンヒルの決斗、そして荒野の七人、大脱走と次々に大ヒットを連発して巨匠といわれるのは、本作公開からたったの8年の間のことなのです

本作には、日本人は登場しませんが、コマコという名前はでてきます
苗字ですから駒子とか小孫とか書くのかも知れません

しかし映画には出てこない、ダニエル・ケン・イノウエの名前を知って頂きたいと思います
その名を知ってから本作を見れば違ったことが見えてくると思います

少し長い説明をします

ダニエル・イノウエは1924年ハワイのホノルル生まれの日系二世です
日米が開戦した1941年、ハワイ大学在学中の17歳でした
彼は生まれ育った米国に忠誠心を示すため、米国陸軍に志願し、日系人だけで編成された第442連隊に配属されました

第442連隊は欧州戦線に送られイタリアに上陸して、各地の激戦地を転戦、その後フランスに進出します

その勇猛な奮戦ぶりは、欧州戦線で米陸軍部隊最高の殊勲を上げ、米国史上最も多くの勲章を受けた部隊となったのです
総計で18,000近くの勲章や賞を受けたといい、米国の歴史に残ることとされています

しかしその損耗ぶりはすさまじく、3000人近い隊員が800人にまでなったほどでした

ダニエル・イノウエは、その部隊で真の英雄というべき映画の中でも無いような大活躍をして軍人に贈られる最高位の勲章である名誉勲章を授与されています
大統領から感状が贈られるほどの有名人になりました
しかしその代償としてかれの右腕は戦傷で切断されてしまったのです

戦後、彼はハワイ大学に復学卒業して、さらに首都ワシントンの法科大学院で法務博士となります
そして本作公開の前年の1954年ハワイ準州の議員に当選したのです

つまり本作はそのイノウエと第442連隊の伝説的な活躍を踏まえて製作されているわけです

なぜ日系人部隊第442連隊やイノウエはそれほどに奮戦したのでしょうか?

日系人強制収容所をご存知でしょうか?
日米が戦争状態となり、日本人は敵国の人間として強制収容所にいれられました
それは米国の市民権を持たないなら当然のこと、米国に帰化していても日本人なら全員だったのです

米国で生まれ育った米国の国籍を持つ日系二世でも、16分の1 以上日本人の血が混ざっているならば強制収容所に送られたのです
そのとき日本人は全ての財産を放棄するか売却するしかなかったのです

終戦後、すぐに日系人強制収容所は閉鎖されました
しかし、日系人はその後も米国国籍を持っていても、旧敵国である日本にルーツを持つということだけで市民権まで剥奪されたままにされたのです

ドイツ系やイタリア系も強制収容されたそうですが、それはごく短期間のことで財産を手放すこともなく、市民権もすぐ回復されたのです

確かに西海岸は日本軍が侵攻するかも知れないという懸念を抱えていたかもしれません
でも日本にルーツを持つというだけでここまで扱いが苛烈になったのは、そこに日本人は有色人種であるという視線による米国の国家的な政策としての差別があったからでしょう

そして本作公開のたった2年半前の1952年にようやく市民権が回復されました
本作で描かれた過去の事件はそんな背景の中で起こったのです

差別は、法令で禁止し、してはならないことだと教育をしていかねばなりません
それが文明国です

しかしそれで差別が無くなったでしょうか?
より影に隠れて陰湿化するだけだったのではないでしょうか?

だからダニエル・イノウエは軍隊に志願し、米国に忠誠を示し、米国人の誰よりも勇猛に戦うことで、 米国人の尊敬を勝ち取ることでこうした日本人への差別を跳ね返えそうとしたに違いありません

ダニエル・イノウエはじめ日系人部隊第442連隊は、米国人としての国民の義務を誰よりも果たしてみせて、差別を無くそうとしたのです
誰よりも米国人であると証明して見せたのです

差別は、差別者をお前はレイシストだと攻撃してもなくなりはしないのです
人間として尊敬される存在であることを示してこそ差別は霧散するのだということです

国民の義務、納税、投票、そして徴兵をダニエル・イノウエと第442連隊は自分達に唯一残された徴兵義務を最大限に果たして尊敬を勝ち取ったのです

米国も日本と同様に米国の国籍が無ければ参政権はありません
永住権を得ていても移民した一世には与えられません
しかし二世からは帰化することで米国国籍を得て初めてすべての選挙権が与えられるのです

日本にルーツがあるとしても、米国に生まれ暮らし、米国に帰化して米国人となったからには、人一倍米国への忠誠を誓い、その証しを行動で示したのです

そのような人物に尊敬は集まっても、もはや差別されることは無いのです

お前達はレイシストだ!と口汚く攻撃することは、結局分断を深め差別をより強固にするのだと思います

それよりもダニエル・イノウエや第442連隊の隊員達のように誰からも尊敬される行動を示し立派な人々であると認められることだと思います
そうすれば差別は自ずから無くなり、それでも差別をしようとする人々は本作のように排除され社会の公正平等がなされるのだと思います

それこそが米国の理想であり、世界が目指すべき社会なのだと思います

大変説明が長くなりました
本作の主人公マクリーディが何故右腕がない男なのか?
イタリア戦線で負傷して日本人に助けてもらったというシーンがあるのか?
なぜ日本人に勲章を返そうとしているのか?
コマコがなぜこのレッドロックの街の悪党どもからあのような仕打ちを受けたのか?
お分かり頂けたと思います

そして主人公が街から去り際に、街の人間がその返せなくなった日本人の勲章を街に欲しがったのかも

日系人強制収容所という米国の国家的過ちを見つめなおし、断罪し日系人への名誉を回復する事が、米国人に取っても重要なことである
それが街に遺される「日本人の勲章」なのです
それが本作のテーマなのです

本作の舞台はアリゾナ州のどこかの田舎町ブラックロック
日系人強制収容所のあった土地のひとつにとても似たところです

冒頭の砂漠の大平原を爆走する長大な特急列車
そのシーンが妙に長いのはなぜでしょうか?

それは米国を象徴しているのです
何十両も連結され巨大で長く重いのです
一度方向を定めてスピードを上げて走りだしたらそう簡単には止まりはしません
それが誤った方向であったとしてもそうなのです

それでも誰かがこの駅で停めろと車掌にいえば、4年ではじめてのことでも列車は停まるのです

主人公の活躍で事件は解決され、正義は回復されます
主人公はまた長大な特急列車に乗ってさっていくのです

なぜこの駅に停まるのは4年で初めてなのでしょうか?
それは大統領選挙と中間選挙が4年ごとだからです
下院議員は任期2年ですが、2年毎に半数が改選されますから、4年毎の中間選挙では全員が改選対象となるのです

つまり間違っているかも知れない方向に爆走する列車を停めて、公正平等の社会正義を実現するのは米国国民の義務だと言うメッセージだったのです

本作は1955年1月7日米国公開
その直前の1954年11月2日米国では中間選挙があり、民主党が大勝利を得ていました

本作は単なる現代版西部劇で留まる作品では決してないのです

長引くコロナ禍、中国との新冷戦の始まり
アジア人差別は米国でも欧州でも広がっているといいます
いまこそ本作とダニエル・イノウエのことを私達は知り、どう行動すべきなのか考える時であると思います

蛇足

その後ダニエル・イノウエは1963年から50年近くにわたって上院議員に在任し上院民主党の重鎮議員となります
2010年からは上院で最も古参の議員となり、亡くなる2012年まで上院仮議長の職にありました
上院仮議長は名誉職ですが、大統領継承順位第3位の超高位な職なのです
ハワイの玄関ホノルル国際空港は、2017年4月に彼を記念して「ダニエル・K・イノウエ国際空港」と改名されたのです

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あき240

4.0正義の佳作

2021年12月27日
スマートフォンから投稿

地味で淡々としたお話です。サスペンスに分類されてますが違います。若干サスペンスな人間ドラマです。演出普通、役者超一流です。
アメリカ人が時折見せる、超弩級の正義感が淡々と且つグイグイきます。よい映画です。知られてないけど。

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越後屋

5.0現代版(異色)西部劇

2020年8月8日
Androidアプリから投稿

片腕の男 ジョン・マクリーディ(トレーシー)が西部の小さな町ブラックロックにやって来る

外部の人間を異様に警戒する町の人々

最終的な対決よりも そこに至る過程の緊迫感、主人公にかかる圧が見処だった

ロバート・ライアン(スミス役)
アーネスト・ボーグナイン(コーリー役)
リー・マービン(ヘクター役)
等がガンを飛ばし、マクリーディ包囲網を作り始める…
嫌だ~こんな町(笑)

ド迫力メンバーに 一歩もひけを取らないスペンサー・トレーシーの存在感に感心させられました
結構、強面でもありました
(これでカンヌ国際映画祭男優賞受賞)

冒頭の乾いた大地を走る弾丸特急列車の映像もよかったです

しばらく西部劇を観ていませんでしたが、もう一度見直してみようかな…と思わせる作品でした

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jarinkochie

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