「吹き替えも素晴らしい」サウンド・オブ・ミュージック よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
吹き替えも素晴らしい
神々しいオーストリアの山並みを天空から見下ろすショットで始まる。そこから視界がぐんぐんと下降して、緑に囲まれた湖のほとりの街を捉える。そして丘の上で歌うジュリー・アンドリュースへと迫るカメラ。このオープニングだけでも感涙ものである。
さらに、アンドリュースが丘の上から去ると、趣たっぷりのタイトル文字と、どれもがスタンダードナンバーとして残る名曲のメドレーが贅沢なひと時の始まりを告げる。
劇中の音楽の素晴らしさは言うまでもないが、カメラワークも素晴らしい。ヨーロッパの映画ではこのような明るく流麗な画面を作ることはなかったのではないだろうか。オーストリアの話でありながら、使用言語が英語であることなど全く気にならない。アメリカが、ヨーロッパを舞台にした映画の製作に大成功したケースだ。
今回観た吹替え版は、トラップ大佐の当初の恋人である男爵夫人の声優を増山江威子が務める。峰不二子の声で、恋に入れ上げることのない冷静な大人の女をしっとりと嫌味なく演じている。字幕版で観たときとこの役の印象が大きく変わった。声優の仕事で作品の新たな魅力が伝わる。さすが大ベテラン。声優の演技も楽しめる吹き替えも悪くない。
ミュージカル映画をたくさん観るほうではないが、この作品は「シェルブールの雨傘」と双璧をなす作品だと思う。
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