劇場公開日 2025年6月13日

「1967年の映画ですが、なぜか退屈するシーンは一瞬もありません。音も映像も色彩もファッションも、すべてがスタイリッシュ!」殺しの分け前 ポイント・ブランク jin-inuさんの映画レビュー(感想・評価)

5.01967年の映画ですが、なぜか退屈するシーンは一瞬もありません。音も映像も色彩もファッションも、すべてがスタイリッシュ!

2025年7月5日
PCから投稿

以下はyoutube「Point Blank (1967) | The Documentary/The Tapes Archive」から得た情報です。

海兵隊の兵士だった若きリー・マービンは1944/6/18に南太平洋で日本軍の待ち伏せ攻撃に遭い、マシンガン掃射による瀕死の重傷を負った。247人中生存者はたった6名という激戦だった。その後PTSDに苦しみアルコールに溺れた。生き残った罪悪感と内なる葛藤が演技に影響を与えている。

MGMとの契約により、監督のジョン・ボーマンと主演リー・マービンは本作をほぼ完全なコントロール下におくことができた。

ストーリーは断片的で、非線形で、意図的に夢のようなシーンが挿入される。主人公のキャラクターは疎外され孤立無援の男であり、企業や組織のエリートと対立する一般人に設定されている。ヘイズ・コードによる脚本の検閲により、使用禁止ワードや暴力シーンを削除されたが、「成人向け推奨」でやっと製作の許可が出た。本作はヘイズ・コード廃止のきっかけの一つとなった。

当初ロケ地はサンフランシスコを予定していたが、荒涼とした冷たい映画である本作にふさわしくないという監督の意見でロスアンゼルスへ変更となった。1963年に閉鎖されたサンフランシスコのアルカトラズ刑務所で撮影された最初の映画でもある。

前の日にエラ・フィッツジェラルドと飲みすぎたため、リー・マービンが撮影初日をドタキャンした。ボーマンは激怒してホテルの部屋を破壊した。

スタントマンが海の水が冷たいと文句をいったため、リー・マービンは自分でスタントシーンも演技した。そのためリー・マービンはスタントマンのボーナス報酬をもらっている。

監督のボーマンは当初モノクロで撮ろうとしていたが考えを改め、初めてカラー映画を撮影した。色を使用して物語を語り、感情を呼び起こす革新的なアプローチを採用し、シーンごとにテーマカラーを決めた。

カーターのオフィス:緑(金を持っている)
姉リン:シルバーグレーとメタリックブルー(冷たく無菌的な死のイメージ)
妹クリス:黄色とオレンジ(暖かさ)

監督のボーマンは色彩へのこだわりについて「アンジーの髪の色をドレスと同じ色にしたいという狂気じみた考えを持っており、それを実現するために髪を3回染めさせた」と語っている。

撮影監督ラスラップはそれまでメインだった大型据え置きのミッチェルカメラではなく、小型で機動力のあるエアフレックス(Arriflex)カメラを使用した。レンズはシネマスコープと呼ばれる横長の映像を撮影するためにPanavision C シリーズanamorphic 40mmを採用した。

すべてのキャストに隠しマイクを装着した初のメジャー映画である。125個の特注ワイヤレスマイクを使用し俳優は自由に動き回れるようになった。不要な背景ノイズが大幅に減少し、自然で臨場感あふれるサウンドスケープが実現した。

ウォーカーとリースの関係は隠に同性愛を示唆している。ウォーカーは本作の中で直接殺人を犯していない。撃たれる前は黒髪、その後白髪に変わっている。金を奪わずに影の中に消えていくラストシーンからウォーカー幽霊説、ウォーカー冒頭で死亡説などの解釈がある。本作は6人の観客がいたら6通りのストーリーを語ると評された。

編集段階でMGMの上層部が介入してきたが、スーパーバイジングエディターであるマーガレット・ブースの鶴の一声で介入が阻止され監督の編集権が守られた。

ジョニー・マンデルはアルカトラズ刑務所の地下室で、何十年も放置され調子の狂ったピアノを見つけ、それに触発されてシュールで断片的なスコアを書いた。

リー・マービンの実生活上のパートナーだったミッシェル・トリオラもかつて服毒自殺を図っており、その経験がリー・マービンの演技に影響を与えた。

公開後の批評家の評判は芳しくなかった。興行収入は1967年のトップ100中32位であり、同年公開、リー・マービン主演のThe Dirty Dozenに負けた。

ブルースターのプール付きの豪邸は1966年にビートルズが滞在している。2002年にドリュー・バリモアが300万ドルで購入し、2018年に1600万ドルで売却している。

リー・マービンとジョン・ボーマンは終生友人関係にあった。リー・マービンの死後、未亡人がボーマンに形見分けをする際、ボーマンはマービンが本作で履いていた13サイズの革靴を選び、現在インディアナ大学のボーマンアーカイブに保管されている。

jin-inu
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