「どうしても考えてしまう事」コルチャック先生 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
どうしても考えてしまう事
ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督の作品は積極的に観て来たつもりだったのですが、『コルチャック先生』と『カティンの森』という二大重要作を見逃していたのが長らく引っ掛かっていました。その内の一作が漸く映画館でリバイバル上映となりました。
ナチス支配下のポーランドでユダヤ人孤児院を運営し、時代の波に翻弄されつつも常に子供の側に立ちながら、最後には絶滅収容所で殺された実在のユダヤ系医師を描いた物語です。
様々なエピソードを盛り込んだり感動的に揺さぶる事も出来るだろうに、予想していたより脚本もカメラも物語と真っ直ぐ向き合っていました。それは虚飾を排そうとしたアンジェイ・ワイダの真っ直ぐな怒りの反映なのだろうと思います。しかし一方で、「今もパレスチナでは子供の命を守ろうとするアラブのコルチャック先生が戦雲を見上げているに違いない」と考えてしまいます。本作と現在の中東は別に考えるべきで、相対的に論じてはいけない事なのでしょうが、それを想像せざるを得ない不幸な時代に僕は生きているのだ。
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