「『羊たちの沈黙』の劣化版」コピーキャット Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
『羊たちの沈黙』の劣化版
総合:65点 ( ストーリー:60点|キャスト:65点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:60点 )
『羊たちの沈黙』以来出来た異常者を心理学で分析するという構図を取り入れた作品。ところどころでその影響がみられるが、全体に質感が低い。
異常犯罪者を心理分析するという面白そうな主題だが、どうもそれほど惹きつけられない。犯人は異常者だけど他の異常犯罪者を真似ることに執着するという理由に明確性がない。しかもその犯人は、冒頭で出てきた異常者で逮捕され刑務所にいるダリルと文通したから操られているというのがまたよくわからない。異常者は執着するものに対して異常者なりの整合性がありそうなものだし、自分が大物だと思い込みたいならば自分なりのやり方をすれば良い。ダリルにどう洗脳されどうして彼に共鳴し自己を捨てて彼の言うことを細分漏らさず忠実に実行しようとするのか、その過程をわからせてくれないと自分としては納得できなかった。これだと実行犯よりも手紙だけで人を操れるダリルのほうが全然凄いはずなのだが、劇中の彼にはハンニバル・レクターのような凄みがなくただ個人の異常者。
また実行犯は研究職にありながら、時間的に能力的にどうやって他の女を殺す犯罪を成功させていったのか、その実行力的な部分が省かれていたのも気になった。
赤い洋服を着た女の首を吊るなど映像は部分的には派手で見映えする。だが『ケープ・フィアー』『羊たちの沈黙』に比べて演出が不足なのか、心に冷たさが迫る怖さが欠ける場面も多い。モナハン刑事の犯人に対する態度はどこか他人事でどうも軽くて緊張感が低い。
テレビ放送で観たのだが、かなり短縮されていてこれで余計に物語がわかりにくくなったり迫力不足になったのかもしれない。しかしそれでも正規の本篇をもう一度観ようという気にはならなかった。あちこちで一歩足りない作品なんだろう。