「記憶喪失映画の金字塔」心の旅路 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
記憶喪失映画の金字塔
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記憶喪失を題材としたロマンティック・ラブストーリー、母が大好きだった映画。
原作の悲劇要素を希釈し善意の人々の思い遣りに満ちたハートウォームな物語に仕立てました。
主人公は原作では20代の若者でしたが映画では渋い紳士風、観客層を意識したのでしょう。ただ、いくら姪のキティが早熟でも不釣り合い過ぎますね。映画で感心するのは無償の愛を貫くポーラ(グリア・ガーソン)の気高さです。真実を告げずにじっと待つ奥ゆかしさは時代を感じさせます。キティ(スーザン・ピーターズ)もチャールズ(ロナルド・コールマン)の眼差しに愛する別の女性の面影を察知、若いとはいえ女性の勘の鋭さは凄いですね。マービン・ルロイ監督の女性観なのでしょうか、彷彿とした女性へのリスペクトを感じます。原題はRandom Harvest:不揃いな収穫?、これではなんだかわかりません、邦題の「心の旅路」は秀逸ですね。
脱線ですが、まるで作詞家の阿久悠さんが描いたような物語、踊子のポーラから「ジョニーへの伝言」、メルブリッジの街で記憶が蘇るくだりでは「五番街のマリー」が頭の中で流れました。ロマンティックの神髄は悲恋なのでしょうが王道のハッピーエンド、これほど持ってかれるラストは久々に観ました。クラシック名画万歳です。
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