劇場公開日 1933年1月

「上品なボニー&クライド」極楽特急 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5上品なボニー&クライド

2022年11月8日
iPhoneアプリから投稿

華麗な手捌きで上流階級から金品を盗み出す泥棒カップル。ボニー&クライドと形容するにはあまりにも瀟洒な2人が織り成すウイットに富んだ掛け合いが気持ち良い。お互いの私物を盗み合うシーンなどは、キートンの無声アクション映画を彷彿とさせるような外連味に満ちている。

彼らはあるとき巨大化粧品会社の遺産にエイムを合わせるのだが、そこを仕切っている未亡人のなんとも美しいこと。カップルの男ははじめこそ殊勝な振る舞いで会社の重役にまで上り詰めるが、次第に未亡人の美しさに魅惑されていく。未亡人もおいそれと男の手に堕ちるようなヘマはやらず、付かず離れずの距離感で男を焦らす。

しかし二人は泥棒と資本家、いわば現代のロミオとジュリエット。二人がめでたく結ばれるはずもなく、計画の露呈と愛しのハニーの乱入によって恋の情熱は泡沫と消える。男が去り際に未亡人の美しい真珠のネックレスを盗んでいくシーンがちょうどいい塩梅に感傷的で美しい。次のシークエンスでは男は泥棒女とヨリを戻しており、二人の仲睦まじい盗み合いが作品にハッピーエンドのピリオドを刻む。

こんな浮気者をよくもまああっさりと…という疑念が残らないでもないが、そのあたりをバッサリと切り捨てられる軽佻浮薄さが黄金期ハリウッド映画の気持ちよさだ。こういうのはヨーロッパやアジアじゃまずお目にかかれない。

因果