劇場公開日 1989年2月18日

「彼我の立場の違い」告発の行方 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0彼我の立場の違い

2023年9月25日
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鑑賞方法:DVD/BD

日本でいえば、不同意性交罪(ひと頃はごうかん罪と呼ばれた)と、その現場助勢のお話ということでした。

被害者サラの担当になったキャサリン検事が、不本意ながら、事務所の上司に推されるまま、司法取引に応じてしまったことは、地方検事に雇われているに過ぎない立場ということもあったと思いますが、それよりも、彼の地(アメリカ)での地方検事の立場というものが、色濃く反映されていたのだろうと思いました。評論子は。

つまり、日本の検察官が最終的には法務省に属する官僚(身分を保障された職業公務員)であるのに対して、彼の地の地方検事は、選挙で直接に住民から選ばれる(日本流にいえば)「特別職」であることと、深く繋がっていると思います。

つまり、必然的に「地域住民を不安に陥れる犯罪者を有罪にして、刑務所に放り込んでなんぼ」という彼らにしてみれば、有罪と見込んで起訴はしたものの、立証に失敗して被告人が無罪放免となることは、絶対に避けたいところだろうと思うのです。(選挙民の目に無能な者として映ると、次の選挙での当選はなくなる)。

そういう背景を考えると、「有罪さえ勝ち取れるのなら…」という、ともすれば被害者の心情にはそぐわない結果になってしまうことは、ことの当然の成り行きと言えそうです。

結局は、キャサリン検事にレイプの教唆(現場助勢)で野次馬連中を起訴させたというストーリーから「逆算」すると、ひょっとしたら実は本作も、そのような現実に疑問を投げかける意味で、ストーリーとして最初は司法取引に応じさせたのではないかと言ったら、それは評論子の勘繰りすぎというのもでしょうか。

日本の刑事司法では、まだまだポピュラーとは言えない「司法取引」の実相(犯罪者を迅速に処罰できるが、時として犯罪被害者に与える痛みも大きい)が描かれているなど、「cinema de 刑事訴訟法」としても、優れた一本だと思います。評論子は。

佳作であったと思います

talkie