「地獄から奴が帰って来た」荒野のストレンジャー　みつまる。さんの映画レビュー（感想・評価）

イーストウッドが監督デビューした『恐怖のメロディ』に続いて撮ったのが、この異彩を放つ西部劇でした。
西部劇では珍しい湖の岸辺にひっそりと佇む西部の町に、何処からともなく男がやって来て、復讐を果たした後ふたたび砂漠の彼方へと消えて行ってしまう。
まるで地獄から戻って来た亡霊のようなこの男には名前すらない。
イーストウッドはこのキャラクターがいたく気に入ったのか、後の『ペイルライダー』にも継承されています。
ＴＶの連続ドラマ『ローハイド』で人気者にはなったものの、ハリウッドではまだまだＢ級俳優の目で見られていたイーストウッドが、アメリカから遠く離れたイタリアの地で撮ったマカロニ・ウエスタンが世界中で大ヒットし、 再びハリウッドに帰って来た。
で、ジョン・ウェインらが愛してやまなかった往年の西部劇の概念を、この作品で根底から覆してみせる。
ストレンジャーが、湖畔の町全体を真っ赤な血の色のペンキで塗りかえてしまったように。