「アメリカの理想と正義それを見失った末の繁栄ならば、そんなものは無意味だ、この街のように崩壊すべきだそれがテーマの映画だったと思います」荒野のストレンジャー あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカの理想と正義それを見失った末の繁栄ならば、そんなものは無意味だ、この街のように崩壊すべきだそれがテーマの映画だったと思います
つかみは最高
冒頭10分で三人の男が撃たれて死ぬ
最初の男は額に穴が開く
そして15分で女を押し倒しているのだから
25分でその女が頭に来て主人公を撃ちに来る
今頃頭に来たのか?
一度きりだからですよ
大笑いしてしまうこの台詞
昨今では問題視されるものです、でも最後まで物語を観て本作のテーマを知れば、何故なのか分かるはずです
これぞ西部劇!
これこそクリント・イーストウッドだというガンマンをみれます
監督2作目
既にスタイルが確立してブレもしないのが良くわかります
物語は西部劇の金字塔「真昼の決闘」を下敷きにした感じです
極悪のならず者三人が刑務所から釈放されて街に復讐にやってくる
それを主人公は成り行きで用心棒になり、彼らを迎え撃つというもの
ところが、一番悪いのは卑怯者ばかりの街の住人達だったのです
「真昼の決闘」では、街の住人達に加勢を頼みますが誰一人助けようとしません
結局、保安官が孤立無援で4人のならず者とたった独りで対決して勝利します
しかしその勝利の胸糞悪さと言ったらありません
主人公の保安官はバッチを捨てて映画が終わるのです
本作ではそんな事件が過去にあり、ダンカンという保安官がなぶり殺しされていたという設定です
保安官の助けてくれとの声を見捨てて街の住人達は黙って保安官が殺されていくのを見ているだけだったのです
しかもその墓には悪漢達をはばかって墓標すら立てていなかったのです
主人公は蜃気楼の中で無から現れて、ラストシーンもまた蜃気楼の中に幻のように消えていくのです
もしかしたら、墓標のない亡骸は幽霊となりさ迷うとの劇中の台詞の通り主人公は殺されたダンカン保安官の幽霊であったのかも知れません
復讐は三人のならず者だけでなく、ダンカン保安官を見殺しにした街の住人達にも及ぶのです
だから冒頭の女性への暴行と暴言シーンが有るわけです
小人が保安官になり町長になる必然があったのです
街の広場に悪人達の為の歓迎パーティーの会場をつくり、街の建物全てを血の色に塗る必然があったのです
初めから街全体への復讐が目的であったのです
街は大勢の死者をだし、大火で軒並み焼失します
多分金鉱山の問題も明るみにでてしまい、この街は消えて無くなってしまうでしょう
ホラー映画?
違います
ただのアクション西部劇?
それも違います
アメリカの理想と正義
それを見失った末の繁栄ならば、そんなものは無意味だ、この街のように崩壊すべきだ
それがテーマの映画だったと思います
クリントイーストウッドは、理想のフロンティアを追い求めた幾多の正義が必ず勝つ西部劇の世界もこのように失われていったのだと言いたかったのでしょう