劇場公開日 1966年7月15日

「もう・・やっちゃいますよ」荒野の1ドル銀貨 ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0もう・・やっちゃいますよ

2011年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

興奮

イタリア映画の歴史に燦然と輝く、マカロニ・ウェスタン映画において異彩を放つスター、ジュリアーノ・ジェンマ主演作品。

西部劇という表向きの仮面を被り、この作品・・やってしまってます。まさに、荒唐無稽、何でもあり、面白ければ何をしても構わないというあっけらかんとした開放感が、観客を異様に清々しい気分にさせてくれる。

誇りと慈愛を胸に、哀愁を持って荒野を駆けて行くアメリカ西部劇では見られない残虐性、爽やかにエッチな表現、あとはとにかく・・邪魔なものは撃ち抜いたり、殴り倒しましょうという自由な世界。現代でこそ、上質で気品溢れるミステリーや家族、映画の歴史を淡々と見つめていく静かな叙事詩がイタリア映画の代名詞のようになっているが、いやいや、それだけでは無かった。まだ、イタリア映画人は息を潜め、復活の時を虎視眈々と狙っている。

ロベルト・ロッセリーニの「無防備都市」からはじまる、イタリア映画の世界への挑発が、セルジオ・レオーネをはじめとしたマカロニ映画に行き着き、今に至る。ハリウッドの量産体制が飽和状態を見せ始め、世界中の映画産業が、未来の興行における突破口を見出せなくなってしまったとき・・・再び、イタリア映画がふいに爆発し、世界を席巻する新ジャンルを提示する。そんな可能性に、ちょっと期待してしまう底力を見せ付けるド迫力の未開感覚。耳をすませば、イタリア映画人のささやかな声が聞こえてきそうだ。たとえば、こんな言葉なんていかがだろうか。

「もう・・そろそろ、やっちゃいますよ?」

ダックス奮闘{ふんとう}