劇場公開日 1972年4月15日

「1953年と言えば、『ディエンビエンフーの戦い』を翌年に控えたフランスが仏印戦争に負ける時期。」好奇心 マサシさんの映画レビュー(感想・評価)

0.51953年と言えば、『ディエンビエンフーの戦い』を翌年に控えたフランスが仏印戦争に負ける時期。

2023年7月9日
スマートフォンから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
マサシ
Gustavさんのコメント
2023年7月9日

マサシさん、コメントありがとうございます。
この映画は、マル作品の中で一番の問題作ですね。母性愛と性に目覚める息子のタブーは偶然のように描かれ、笑いに包まれた家族のシーンで終わる。タブーに挑戦してコメディとして完結するマルの演出に唖然としました。小生は内容より描き方に注目して映画を楽しむ癖があり、これには参りました。1954年の時代設定とタブー以外は、ほぼマル監督の少年期を基に創作されたもので、脚本の朗読を聴かされたジャン=クロード・カリエールから絶賛されて映画化に自信を得たようです。レア・マッサリのキャスティングが素晴らしい。価値観の違うラテン系の女性に設定した意図が明確ですね。と言っても反モラルな展開は公開当時から賛否両論あり、日本の批評家では野口久光氏が高く評価されたくらいで、マル監督が好きな淀川さんでもベストテンからは洩れています。
公開された1972年の私的ベストでは、①ラストショー②好奇心③フェリーニのローマ④フレンジー⑤愛すれど哀しく⑥ラムの大通り⑦わが緑の大地⑧死刑台のメロディ⑨暗殺の森⑩恋 と小生のお気に入りです。

1932年生まれのマル監督は、13歳の1946年に心臓弁膜症の診断を受け母親と共に鉱泉場に行き湯治した経験があります。それを1954年に変えたのは、物語が完全な自伝ではないことと、ディエン・ビエン・フーの戦いで仲の良かった従兄が戦死した衝撃を引き摺っていたからと証言しています。クストーの助監督時代ですね。1968年の五月革命を経たフランス映画の価値観の彷徨を象徴する、マル監督のノスタルジーと既成概念への投石を試みた野心作と思います。

Gustav