「【今作はヴェトナム戦争出征前の19歳の海兵隊員達の乱痴気騒ぎの中、素朴な少女に声を掛けた青年兵が恋に落ちる様と、戦場から戻った身も心も傷ついた青年兵が少女と再会するシーンが響く作品である。】」恋のドッグファイト NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作はヴェトナム戦争出征前の19歳の海兵隊員達の乱痴気騒ぎの中、素朴な少女に声を掛けた青年兵が恋に落ちる様と、戦場から戻った身も心も傷ついた青年兵が少女と再会するシーンが響く作品である。】
■1963年。
ヴェトナム戦争出征前の”4B”達は、誰が一番ブスな女の子をパーティーに誘うかと言う”ドッグ・ファイト”を計画する・
エディー(リヴァー・フェニックス)は、町のダイナー”ローズ”で母と働くローズ(リリ・テイラー)に声を掛け、彼女は逡巡しつつも誘いに乗り、パーティ会場に行くがそこで、それが悪戯と分かりローズは怒り帰ってしまうが、彼女の素朴な優しさに惹かれていたエディーは詫びの手紙を彼女の部屋の窓際に置いて去るのであった。
その後、二人は仲直りのデートに行くが、エディーが背広とネクタイをしていなかった為に慇懃なウエイターから入店を断られるも、二人は喪服を調達しウエイターに悪態を尽き乍ら食事をする。
そして、二人はローズの部屋で結ばれ、翌朝、エディーは彼女から住所を書いたメモを貰い、南ヴェトナムの戦場に赴くのである。
仲間を失い、自分も足に怪我をしながらアメリカに戻ったエディ―は、”何人殺したんだ!”と悪意ある言葉を掛けられながらも、ダイナー”ローズ”の向かいの酒場に入りウイスキーを頼むのである。
彼がヴェトナム帰りと知った店主と客は彼に”ご苦労様”と言い、エディーはローズの事を聞く。すると、店主たちは”今はローズが店を仕切っているよ。”と答え、エディーはウイスキーを飲み干し、足を引きずりながら逡巡しつつ、”ローズの店”のドアを開けるのである。
そこに居たローズは彼の姿に気付き、静かに彼の元に歩み寄り、お互いに”ハイ、ハイ”と声を掛け、抱き合うのである。エディーはローズの肩に顔を埋め、少し泣いているように見える。そんなエディーをローズは優しく抱きしめ背中を撫でるのである・・。
◆感想
・今作は、リヴァー・フェニックス主演作の中では、最も評価が低かった作品だそうである。
中盤まではその意見は分からないでもないが、今作の魅力はエディーを演じるリヴァー・フェニックスとローズを演じたリリ・テイラーとの、素朴な恋に落ちる過程が素敵なのである。
エディーが悪友達に唆されての、”ドッグ・ファイト”。けれども、彼は素朴で、フォークソングを愛するローズに惹かれて行くのである。ここで流れるピート・シーガーの”We Shall OverCome"や、ボブ・ディランの”くよくよするなよ”などが、ローズの部屋に貼られたジョーン・バエズなど、当時のフォークシンガーの写真と相まって、沁みるのである。
■中盤までの、悪友達の乱痴気騒ぎの中、小さな恋を育んで行くエディーとローズの姿と、ケネディ暗殺のニュースが流れる中、ほんの少しだけ描かれる南ヴェトナムでエディー達が爆撃を受けるシーンからの中盤までのトーンとは全く違う、エディーの帰還する笑顔無き姿。
だが、彼が逡巡しながらもローズと再会するシーンは白眉である。凄く心に響くのである。
<今作はヴェトナム戦争出征前の19歳の海兵隊員達の乱痴気騒ぎの中、素朴な少女に声を掛けた青年が恋に落ちる様と、戦場から戻った青年が少女と再会するシーンが響く佳品なのである。>
