「原子でなく原始怪獣」原子怪獣現わる odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
原子でなく原始怪獣
田中友幸にゴジラ製作の着想を与えた映画として怪獣フリークの間では有名な作品。プロット的に似た部分もあるがコンセプトは全く別物と言ってよいだろう。
北極の核実験で氷に埋まり冬眠状態だった恐竜が目覚め、帰巣本能で海流に乗り、船を襲ったり灯台を破壊したりしながら、かっての生息地だったニューヨーク沖に戻ってくるという設定。
実験場で怪獣の起こした雪崩で九死に一生を得た核物理学者トム・ネスピット博士のモンスター目撃談を誰も真に受けずショックでの精神錯乱と決めつけられる、憤懣やるかたない博士は古生物学の権威エルスン教授に助け船を求めますがとりあってもらえません、美人助手のリー・ハンターは氷漬けのマンモスの発見例もあることから興味を持ちます、彼女の助けから怪獣はレドザウルスの亜種と推定されます。レドザウルスは特撮のレイ・ハリーハウゼンの造形でT-REX似ですが尻尾を挙げて歩くのを嫌い引きずる4足歩行としたそうです、低予算から1体を使いまわした駒撮りと実写のフィルム合成です。キングコングフリークならではのお約束でニューヨークで大暴れ(電車を襲うのはゴジラの方だけです)、さすがにバズーカ砲にはまいったようですがあっさり殺られては盛り上がらないので血液が人に免疫のない古代のレトロ・ウィルスに汚染されているこじつけでとどめをさせません。幕引きは原作者のレイ・ブラッドベリが怪獣の骨組みのようだと称したコニーアイランドの遊園地のジェットコースター場、劣化ウラン弾のようなものを撃ち込まれもがきながら息絶えてしまいます。核実験は出てきますがゴジラのような放射能怪獣ではありませんし火器で退治可能、顔は怖いですが躯体は太めの短足で迫力もゴジラの比ではありません。初代ゴジラのアメリカ版では反核思想を嫌ってアメリカ人記者の体験談風に改ざんされたくらいですから反核のようなメッセージ性も無く純粋な怪獣娯楽映画です、秀逸な起承転結、プロットは以降の怪獣映画に多大な影響を与えたことは間違いないでしょう。