月世界征服(1950)のレビュー・感想・評価
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2001年宇宙の旅の直接の先祖であるだけでなく、社会的影響力すら勝りこそすれ劣ることはない
素晴らしい! 1950年の製作であるがカラー作品 つまり予算と気合いが入った作品ということ 世界初の人工衛星スプートニクはこの7年も後だ ガガーリンによる初の有人宇宙飛行は11年も後の事になる であるのに、当時の科学知識を総動員してしっかりと作られており、ほとんどの映像に科学考証の間違いが見られない 原作はSF作家の巨匠ロバート・ハインラインであることによるが、出来うる限り科学考証に忠実であろうという製作態度である 後年のSF映画の方が噴飯もののシーンが多いぐらいだ 現代の作品であってもだ この科学考証に忠実な製作態度は2001年宇宙の旅に於けるキューブリック監督と同じスタンスであり、本作が2001年宇宙の旅の直接の先祖であると言って良いと思う 宇宙空間に浮かぶ半月状の地球の映像は、当時誰も見たことも無い強烈なセンスオブワンダーな映像だったはずだ 月着陸シーンはアポロ11号の実際のシーンとさして変わらないくらいだ 原子力宇宙船ルナ号はディスカバリー号のように真空の宇宙空間を無音で飛行する 静止しているかのように 無論、慣性飛行中であるから後尾の噴射ノズルから噴射炎もない そして驚いたのは宇宙服だ 乗組員4人毎に色が違う設定なのだ 2001年のディスカバリー号の宇宙服がカラーバリエーションになっているのは本作が由来ではないか? 何しろ船長の着用する宇宙服はボーマン船長の宇宙服の赤色に似たオレンジ色なのだ そしてクライマックスにはエアロックから宇宙服を投棄するシーンすらあるのだ 前半のハイライトは、月に向かう途中での慣性飛行中の船外活動シーン 不注意により一人の宇宙飛行士が宇宙空間に流されてしまう 救助シーンは、ほとんどゼログラビティそのままのシーンが展開されるのだ 70年近い昔、まだ人工衛星すら存在していない、人間が宇宙飛行が出来るのかすらもわからない時代に、想像だけでこのような映像を作れたことに驚嘆するほかない 本作はこのように2001年宇宙の旅やその他のSF映画に極めて大きな影響を与えたのは間違いない いやそれだけでなく、現実のアメリカの宇宙開発政策に影響を与えていたこともあきらかだ 本作の後に米ソの宇宙開発競争が起こり、米国が立ち遅れて、必死の努力で追い越し月への有人着陸飛行を成功させる それは全く本作が冒頭で述べるそのままの展開となったわけだ 何しろ宇宙基地はテキサスに作るとまで言い切り、アームストロング船長の月着陸のコメントを彷彿とさせるシーンまである 予言あるいは未来シナリオと言うべきくらいだ そして宇宙を制するものは地球を制するのだとの将軍のセリフに一同が顔色を変えるシーンは、21世紀ではそれが現実化していることがハッキリしている 中国の宇宙の軍事利用に対抗するために、米国は宇宙軍を設立したのだから つまり本作は2001年宇宙の旅の直接の先祖であるだけでなく、社会的影響力すら勝りこそすれ劣ることはない それほどの意義をもつ重要な名作だ エンドマークは、ジスイズエンドとでる そして一瞬遅れてその下に、ツウザビギニングと続くのだ この物語は宇宙開発の最初の一歩に過ぎないと それこそが本作のテーマだったのだ
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