劇場公開日 1982年9月25日

「世界映画史上のベストテンに選ばれるべき、ジャン・ルノワールの傑作」ゲームの規則 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0世界映画史上のベストテンに選ばれるべき、ジャン・ルノワールの傑作

2021年7月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

私にとって、ジャン・ルノワール監督は難物である。「大いなる幻影」を初めて観た時など、何故感動出来ないのか不甲斐ない苛立ちを覚えた。素晴らしい映画であると全面的に認めながら、映画狂の愛情をもってしても、納得できる反応が生まれてこない忌まわしさは、それまで全く経験が無かったため強烈な記憶として残ってしまった。そして、今度はルノワール監督の最高傑作「ゲームの規則」である。私は、特に後半の展開にある映画の盛り上がりに、ため息交じりの感嘆を何度も反芻しながら、それは同じフランスの巨匠ルネ・クレールの畳み掛ける場面展開の見事なリズムとテンポの演出力に類似しながらも、この映画の本質に自分は深入りできないと意識した。それは「大いなる幻影」の初見の時に感じたルノワール監督の人間の器の大きさ、映画監督としての寛容さに圧倒されたことに関わる。この作品を支配するルノワール監督のこころの豊かさ(巨大な温もり)に、どっぷりと入り込めない。それは、私と言う存在がそれを享受するに相応しくないとする、自己批判を生む。また、フランソワ・トリュフォーは、ジャン・ルノワールを世界で最高の映画作家と断言している。これまでの私的な映画遍歴をもって、トリュフォー監督がルノワール監督の偉大さを尊敬することが、充分に理解できる。
どうも私という映画の僕(しもべ)は、映画は誰にでも理解できる表現で創造されなくては成らないと根底から考えているところがある。そうでなければ、チャールズ・チャップリンとジョン・フォードを映画の神様と決めつけないであろう。ルノワールの作品に対して、今満足な感想を記すことは不可能だ。ルノワールの映画は、私が狂喜し感動しても、饒舌になる世界と違っている。救いは、3年前にテレビで完全版の「大いなる幻影」を再見出来たこと。この時は感動のあまり涙を浮かべた。そして、この作品には、感動のあまり言葉を失った。

  1980年 2月29日  フィルムセンター

1939年の制作年から43年経った1982年に漸く日本公開された。その2年前にあたる日本未公開時点のこの版は上映時間1時間29分で、完全版より17分短い。それでも凄い作品と感銘を受けたことは事実。世界の映画史上のベスト10に選ばれるべき傑作と思う。この年のキネマ旬報のベストテンでは、旧作ながら淀川長治氏がベストワンに選出している。
僭越ながら作家論みたいなことを言わせて貰えば、”ほとんどの芸術家は貪欲であり、そうでなければならないと思うが、ジョン・フォードとジャン・ルノワールだけは違う”と世界の様々な映画監督の作品を観てきて私が辿り着いた一つの結論があります。

Gustav
everglazeさんのコメント
2021年9月29日

Gustavさんの映画愛が伝わってくるレビューですね!
ストーリーの表面しか観ていない自分には到底到達できない領域です。

everglaze