「日米などに宛てた警告と皮肉が今では・・・」グレムリン マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
日米などに宛てた警告と皮肉が今では・・・
80年代はSFXを使った作品が多く作られた。「スター・ウォーズ」によって飛躍的に発達した映像技術により、ファンタジーから冒険活劇までハリウッドが活気を取り戻した時期だ。英国では、あのジェームズ・ボンドまで宇宙に飛び立っている。
このグレムリンは、ちょっぴりブラックなコメディと、ソフトなホラーが混じった独特の風味を持ち、幅広い年齢層に指示された。
いま観ると、マペットだけでよくここまで作ったものだと改めて感心する。マペットは用途によって動く箇所などが違うので、ワンカットのなかでも入替える必要がある。カメラワークを工夫して、フレームの外でマペットを入替えているスタッフがいると思うと、いまのCGにはない微笑ましさがある。
影の使い方も古典的だが、学校の実験室でモグワイが餌を引き寄せるシーンなど効果的だ。
この作品が楽しいのは、スタッフの遊び心が満載なこと。
グレムリン達の悪態は、まるで酔っぱらいオヤジの集団で、ネクタイを頭に巻くが如くポップコーンの袋を両耳に被せた者もいれば、女の子に向かってコートを両手で広げて前を見せるヤツまでいる。
生物教師の臀部に刺さった注射は十字架に見え、刺したグレムリンは悪魔のくせに「天罰だ」と言わんばかりだ。
ギズモはTVで観た映画「スピード王」(1950)に酔いしれてクルマをぶっ飛ばす。
ビリーの飼い犬の表情も楽しい。とくにモグワイが犬に代わるペットになると聞いたときのショックを受けた表情がいい。
「白雪姫」を観るグレムリン達のなかにミッキーがいるのは今や誰もが知っているが、当時は気がつかない人も多かった。
カメオ出演もある。
製作のスピルバーグや音楽のジェリー・ゴールドスミスが発明展の会場にいる。「禁断の惑星」(1956)のロボット、ロビーまで闊歩する。
脇役の顔ぶれも面白い。
なかでも、イヤミな銀行員ジェラルド役のジャッジ・ラインホルドは翌年「ビバリーヒルズ・コップ」では“ビリー”ことローズウッド刑事を演じて好印象を与える。
もうひとり、グレムリンが怖いから早く帰ろうと言った副保安官を演じたジョナサン・バンクス。彼も「ビバリーヒルズ・コップ」に出演しており、悪党メイトランドのボデイガードで非情さを見せる。
いま観ると、「グレムリン」が製作された時代背景も興味深い。
アメリカに日本の製品がどんどん進出していった時代だ。外国製品嫌いのフッターマンが、何かにつけ外国製品にはグレムリンが取り憑いていると吐き捨てる。
ラストでは、モグワイの元の持ち主、チャイナタウンの老人が「アンタらはいつもそうだ。自然の摂理を破ってでも快楽を得ようとする」とアメリカや日本など先進国の大量消費や公害を糾弾する。あの頃、この台詞が中国に当てはまることになろうとは思わなかった。時代の移り変わりとは面白いものだ。
p.s. この映画を観て思いだしたことがある。
当時、ホームシアターなる言葉が聞こえ始め、コンシューマ向けのサラウンド・デコーダー(アナログ5.1ch)が発売された。
エンドロール後のグレムリンの笑い声が時計回りに館内を一周するが、それを家庭内で再現できるかがポイントで、「グレムリン」のレーザー・ディスクはデコーダーを調整するためのリファレンスになっていた。
はじめましてこんにちは。
レビュー拝見しました。
深い洞察と背景等、感銘しました。
公開当時は結構可愛らしさ全面の
パブリシティーだったと記憶しています。
こういう裏があったとは映画って深いなあ。
これからもレビュー楽しみにしております。