「仇敵は「鉄の爪」で来た。」クレージーモンキー 笑拳 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
仇敵は「鉄の爪」で来た。
BS260で視聴。
山の中で隠棲する武芸の達人チェン老人の教えを受けているジャッキー。田舎暮らしに飽き足らず町に出てきて、師範代に収まるが、ジャッキーを見つけたチェン老人は、強力な殺し屋エンの餌食になってしまう。ジャッキーはすんでのところで、老人の兄弟・弟子で、足の悪いソウの機転に救われる。それからは、復讐をちかって、ソウ老人の猛訓練を受ける日々。
最後は、プロレスのフリッツ・フォン・エリックを思わせるエンの「鉄の爪(アイアンクロー)」戦法に対して、一門の最終奥義である、人間の四つの感情「喜び」「怒り」「悲しみ」「笑い」をコントロールする技法を身につけて立ち向かう。初めは全くの劣勢だったが、エンの猛攻撃に対して、ジャッキーが「泣き」で対応すると、相手がわずかに怯む。それが、次に「怒り」を爆発させる糸口を生む。ジャッキーの若さが、次第にエンの暴力性を上回るようになるところが見事!「怒り」が言わば人間の感情の自然の発露であるに対して、「泣き」や「笑い」は演技を伴う。単なる自然な感情(ユーモア)ではなく、コミカルなドラマにまで昇華させているところが素晴らしい。
もしかすると、ジャッキーはこの映画で、初めて演技に開眼したのではないか。ジャッキーの元々の支配者であって、この映画の脚本を書いたロー・ウェイは、それを導いたことになる。ユーモアを土台にしたコミカルな演技は、カンフーばかりでなく後のアクション映画でこそ役立つ。大変、皮肉なことに、彼らは、この映画で袂を分つことになるのだが。
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