クリスチーネ・Fのレビュー・感想・評価
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これを見たらクスリには手を出さないだろう
「バーダーマインホフ」を見に行ったとき、監督のウリ・エデルという名前を見て、だいぶ前にその人の映画を見た記憶が甦って確認してみたら、それがこの作品だった。「バーダー...」はドキュメンタリータッチの冷徹な視線で表現した映画だが、この作品も同じタッチでありながら、どこか温もりが感じられる内容だった。
13歳で麻薬に手を出してしまったクリスチーネは、何度かクスリから抜けようとするのだがそれでもまたクスリの世界へと入ってしまう。その少女の姿がとても悲しげで切ない。クリスチーネをクスリへと引き込んでしまう周囲の環境も描かれていることもあって、切なさには怒りも含まれるものなのだ。
麻薬に手を出した者には、その個人に非難と批判が集中する。しかし、クスリに手を出してしまうのは、すぐに手が届くところにクスリがあり、勧める者がそばにいるという環境がそうさせるのだ。この映画からは、単純にヤク中になったことを一方的に非難などせず、その環境をつくりだした者たちを非難し、厳重な摘発をすべきことを感じさせる。
この作品は当時のドイツに麻薬中毒の若者が急増したことで製作され、大ヒットしたことで麻薬に手を出す若者がかなり減少したという効果があったという。日本では、麻薬を題材にした映画は教育映画という部類で製作されて、一般にはあまり知られない。しかし、あえて言わせてもらうと、学校で生徒たちに見させたって、生徒は嫌いな授業のひとつでしかなく、まともに見ようとはしないものだ。麻薬撲滅を知らしめたいのなら、一般公開できる、きちんとした映画を製作する努力をする必要があると思う。
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