クリスチーネ・F

劇場公開日:

解説

13歳の少女クリスチーネが、麻薬に溺れ、そのために売春するという姿を、実在の彼女の手記(『われら動物園駅の子どもたち』日本語訳『かなしみのクリスチアーネ』読売新聞社刊)を基に描くドキュメンタリー風ドラマ。製作はベルント・アイヒンガー、監督はこれがデビューのウルリッヒ・エデル、カイ・ヘルマンとホルスト・リークの原作を基にヘルマン・ヴァイゲルが脚色。撮影はユストゥス・パンカウ、音楽はデイヴィッド・ボウイ、メイクはコーリン・アーサーが各々担当。出演はナーチャ・ブルンクホルスト、トーマス・ハウシュタイン、イェンス・クーパル、イアン・ゲオルグ・エフレル、クリスチアーヌ・ライヒェルトなど。

1981年製作/西ドイツ
原題:Christiane F.
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1982年6月12日

ストーリー

'62年5月20日生まれのクリスチーネ(ナーチャ・ブルンクホルスト)は、68年、北ドイツから西ベルリンに、両親と妹と移り住んだ。73年両親が離婚。母親(C・レハル)は恋人と過ごす時間が多く、クリスチーネは孤独だった。学校や〈中央の家〉と呼ばれる公営の子供施設にも何の関心も示さない彼女は、唯一、デイヴィッド・ボウイーの音楽にひたっている時だけが幸福だった。そして彼女はディスコティック〈サウンド〉に通うようになる。そこにはヘロイン中毒者〈フィクサー〉がたむろしており、そのフィクサーの一人デトレフ(トーマス・ハウシュタイン)と知り合う。そのころ、彼女はLSDを初めて試しフィクサーの仲間入りをしていた。そんなある日、大ファンのデイヴィッド・ボウイのコンサートがベルリンで行なわれた。ボウイの歌に酔ったその日の帰り、彼女は初めてヘロインを経験する。そしてデトレフと同じ世界に入れた嬉びにひたる。その頃から彼女の生活の場はツォー駅周辺になり、友達たちも含めて毎日2回注射を打っていた。必要なヘロイン代は身を売って稼いだ。デトレフはホモに身を売っており、クリスチーネはそのことを許せなかった。やがて、クリーンになる決心をした二人は、三日間の地獄のような禁断症状(ターキー)に耐えその望みを叶えるが、それも束の間、再びツォー駅で不良外国人に身を売ってはヘロインを打つ日々を続ける。そしてある日、仲間で最年少のバブシー(クリスチアーヌ・ライヒェルト)が“黄金の一発”と呼ばれるより純粋で高濃度のヘロインを打って死んでしまう。ショックを受けるクリスチーネだったが、彼女も、遂にその針を刺す日がくるのだった。

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映画レビュー

4.5これを見たらクスリには手を出さないだろう

2009年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「バーダーマインホフ」を見に行ったとき、監督のウリ・エデルという名前を見て、だいぶ前にその人の映画を見た記憶が甦って確認してみたら、それがこの作品だった。「バーダー...」はドキュメンタリータッチの冷徹な視線で表現した映画だが、この作品も同じタッチでありながら、どこか温もりが感じられる内容だった。

13歳で麻薬に手を出してしまったクリスチーネは、何度かクスリから抜けようとするのだがそれでもまたクスリの世界へと入ってしまう。その少女の姿がとても悲しげで切ない。クリスチーネをクスリへと引き込んでしまう周囲の環境も描かれていることもあって、切なさには怒りも含まれるものなのだ。

麻薬に手を出した者には、その個人に非難と批判が集中する。しかし、クスリに手を出してしまうのは、すぐに手が届くところにクスリがあり、勧める者がそばにいるという環境がそうさせるのだ。この映画からは、単純にヤク中になったことを一方的に非難などせず、その環境をつくりだした者たちを非難し、厳重な摘発をすべきことを感じさせる。

この作品は当時のドイツに麻薬中毒の若者が急増したことで製作され、大ヒットしたことで麻薬に手を出す若者がかなり減少したという効果があったという。日本では、麻薬を題材にした映画は教育映画という部類で製作されて、一般にはあまり知られない。しかし、あえて言わせてもらうと、学校で生徒たちに見させたって、生徒は嫌いな授業のひとつでしかなく、まともに見ようとはしないものだ。麻薬撲滅を知らしめたいのなら、一般公開できる、きちんとした映画を製作する努力をする必要があると思う。

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こもねこ