「筋肉だけでなく頭もよく働くんで!」恐怖に襲われた街 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
筋肉だけでなく頭もよく働くんで!
ベルモンドの筋肉と体格のかっこよさ、頭と勘と運動神経の良さと同僚や部下からの人望が基盤にあって、危険で命がけのアクションの規模の大きさとダイナミックさが思う存分繰り広げられる最高傑作がこの映画だと思います。女性との絡みがないので地味?と当初は思っていました。でもとんでもない!最高の作品です。3回目鑑賞で実感しました。(2021.8.4.)
タワマンやヘリコといった道具立て、走る地下鉄の上を立ちながら、そして匍匐前進しながら進む。ルテリエ=ベルモンドは栗色の革ジャン或いはベージュのトレンチコートをまず脱ぎます。それからおもむろに普通の人が出入りもしなければ移動もしない場所で仕事開始です。窓から外へ、滑り落ちそうになりながら屋根歩き、ミノスが落とした硝子破片はちゃんと捕獲、ラファイエットにも派手に突っ込みます。公衆電話の背景の音にもライターの火の明かりにも神経を尖らせます。
音楽は怖い系繰り返しメロディーのモリコーネ。使われ方が上手くて頭から離れません。
高層マンション内のインテリアに当時を十分に感じました。いかにも70年代らしさが出ていたのは寝室とリビングルーム。壁やドアに使われている色はクリアで強い赤、東洋風の飾りや置物に毛足の長いカーペット。今とあまり変わらない印象だったのはキッチンで、大きな食洗機に冷蔵庫とコーヒーメーカー。そして室内やクローゼットの鏡が何度も非常に効果的に使われていました。
時代を感じたのはオフィスで、電話、ラジオ、レコード、オープンリール、テレビなど。ラジオの収録スタジオ内のマイクのうねうねには目を見張った。機能というよりデザインなんでしょう。見れば見るほど70年代で面白いと思いました。
女性が3名も命を落としましたが、ナースのエレーヌとルテリエは互いにイライラしながらも優しい雰囲気になって次までにひげ剃りグッズを準備するというのが最後の会話だったのが少しの救いです。