「【改めて考えたこと】」CUBE ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【改めて考えたこと】
この作品を観るのは、20年以上ぶりだ。日本リメイク版の公開の前の予習だった。
オリジナル「CUBE」は、現在の六本木ヒルズの一角にあったWAVE内のミニシアター・シネヴィヴァン最期の上映作品で、もっとも人気を博した作品だったように記憶している。
当時観た時は、カナダの制作で、こんなユニークな発想や状況設定の作品が出来るのかと非常に印象深かったことを思い出した。
だが、今回改めて観て、その時気が付かなかったのか、もう忘れてしまっていたのか、いくつもユニークな示唆があって、CUBE自体もアートで、このままリマスターして劇場公開しても良いレベルだと感じた。
世の中には様々な「陰謀説」が囁かれている。
Qアノンや、ネット右翼が大好きなディープ・ステートがそうだ。
ちょっと前だったらフリーメイソンや、イルミナティもそうだが、フリーメイソンは、そうした組織ではないことを自ら公言しているし、フリーメイソンの乗っ取りを画策したイルミナティは、その陰謀が暴かれ、ずっと昔に消失してしまっている。
CUBEはどうだ。
外郭だけ作成し、他は知らないという男の示唆するところは重要だ。
役割を分け、それを忠実に実行しただけ。どのように利用されているのかは知らない。陰謀などないのだ。起こっていることは全て不可抗力だ。
これは、僕たちの世界そのものではないのか。
だが、CUBEの中の人間と同様、役割は果たしていても、或いは、役割を果たしていると感じていなくても、CUBEが、世界が、どのようなシステムで動いているのか詳細は知らず、世界のどこかで神々のようにふるまう輩がいて、世界を動かしているような気になるのだ。
アダム・スミスが「国富論」で「見えざる手に導かれるように」と記してしまったばっかりに、余計、陰謀論に拍車がかかるようになってしまったのだろうか。
(※因みに、日本では「見えざる手」に「神の」と修飾が点きますが、これは日本の経済学者の誇張なのだそうです。)
そして、このCUBEに導かれた人のように、本当は、知恵を絞れば、ソリューションは見いだせるのだと言うのが、この映画の本当の意図のように思える。
陰謀は無能な傍観者の考え方だ。
CUBEのなかで起こる差別、罵詈雑言、怨恨、暴力も僕たちの世界のものだ。
まあ、警察官だと言う男も含め、少しステレオタイプのような気もするが、シンプルに示唆的にするための演出だとう思う。
ただ、サバイブするのが......というのは、こうしたタイプの映画のありがちな設定だなと思って、少し笑ってしまった。