「西洋美術が好き、LGBTに関心があるというなら観ておくべき映画だと思います そうでなければあまりお勧めはできません」カラヴァッジオ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
西洋美術が好き、LGBTに関心があるというなら観ておくべき映画だと思います そうでなければあまりお勧めはできません
主人公の名前が本作のタイトルです
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ
1573年生まれのイタリアの画家
西洋美術好きなら誰でも知る高名な画家です
ルネサンスの後に頭角を現して、バロック絵画の草分けとされます
その絵はドラマチックでファンは多く、自分もその一人です
その一応伝記と言うべき映画です
西洋美術好きなら彼の生涯のあらましは頭にはいっていて本作を観ているでしょうから、時系列があちこちに飛ぶような破天荒な演出でも、いまはこのエピソードをやっているのだなと分かるようにはできています
また彼の主要な絵画はだいたい頭にはいっていて、その絵をあらかた思い出せる
というか数年前に日本で開催されたカラバッジョ展にもいって本物を見てきて感銘を受けたというような方ならば、本作のおもしろみも理解されようかと思います
しかしカラバッジョの名前を知らない方、もちろんその生涯についても知らない、まして彼の絵画を一枚も観たことがないという方には辛い時間を過ごすことになる映画だと思います
映像はカラバッジョの絵画がまるでそのまま動きだしたかのように、役者、照明、彩度にこだわって撮影してあります
例えば彼の有名な作品「音楽家たち」を実際に俳優に絵画モデル役をさせてそれを再現してカラバッジョが描いているシーンがあります
れだけでなく、あちこちの映像で彼の作品の一部分を実物で絵画そっくりに再現しているシーンが多数あります
もともとカラバッジョはドラマ性を感じる主題、それを盛り上げる強烈な光線とコントラストで絵を描く画家で、映画的な絵画なのです
もし彼が現代に生まれていたなら、才能ある映画監督になっていたと思います
この遊びを、これはあれ、あれはこれとできるならば楽しみようもあるのですが正直つまらない
映画としてのカタルシスも、ドラマ性もないのです
そして、本作はこのカラバッジョの伝記というのは口実で、実はLGBTのことを主題した映画なのです
LGBT は人類の大昔から普通に有ることであって、400年昔も現代も変わりはしないと訴えているのです
物語はカラバッジョのことで当時を舞台にしているはずなのに、タイプライターや色とりどりの電球の光る居酒屋が登場したり、鉄道や自動車の音が聞こえてくるのはそれをいいたいための演出です
本作は1986年の公開
LGBT を取り上げた映画は当時まだ少なく、ましてLGBT とカトリック教会を絡めるというような本作は、きわどいというか大変な勇気が必要であったと思います
それがベルリン国際映画祭の銀熊賞(特別個人貢献賞)受賞の意味だと思います
本作は世界的映画賞を受賞しているにも関わらず、ソフト化もなく近年までとても鑑賞困難な作品でした
というのも、このようにかなりの癖のある映画だからでしょう
なので今回の上映は大変嬉しいことでした
西洋美術が好き、LGBTに関心があるというなら観ておくべき映画だと思います
そうでなければあまりお勧めはできません
カラバッジョの生涯について、普通に学びたい方は、2010年の「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」をご覧になられた方がよいと思います