悲しみは空の彼方にのレビュー・感想・評価
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母の願い
女優を目指す華がある女性ローラ(ラナ・ターナー)、大切に育てられた砂糖菓子のように可憐な娘スージー(サンドラ・ディー)。理不尽な差別に耐え生き抜いてきたアニー(ファニタ・ムーア)、黒人の母の元に生まれた事を隠し、苦悩しながら生きる美しい娘サラジェーン(スーザン・コーナー)。海水浴場で偶然に出会った二組の母子が、生活を共にするように。
何処までも優しいアニーと、娘サラジェーンの心のすれ違う様が痛ましく、別れ際での悲しい嘘が切なく涙を誘う。
荘厳な葬儀で、マヘリア・ジャクソンが力強く歌うゴスペルが胸に響く。
ーあなたを抱かせて。
私の娘として。
NHK-BSを録画にて鑑賞 (字幕版)
社会派ヒューマンドラマの名作
足の踏み場もないくらい混雑したコニーアイランドのビーチで迷子になった娘を必死に探すローラとそれを助けるカメラマンのスティーブ、娘は黒人のアニー母娘と一緒でした。二組のシングルマザーと青年の奇妙な絆を11年にわたって描く社会派ヒューマンドラマ。
この時代、女性が自力で生きてゆくことは難しいでしょうし、人種差別も酷かったことでしょう、そんなセンセーショナルなテーマに正面から臨んだのが原作者のファニー・ハーストさん。原作ではお菓子づくりで成功しますが映画では俳優とメイドと分かり易い設定に変えています。
メイドと言っても卑屈な主従関係ではなく、同じ年頃の娘を抱える母同志として助け合う関係です。それでもアニーの方が一歩引いた存在に徹しているので白人の観客に受け入れやすい配慮というのは察しられます。にもかかわらず南部の公開ではボイコットが起きたようです。
人種が絡まなくとも年頃の娘を育てるのは至難の技、世の中は危うい誘惑に満ちているのですから、なかなか親の真心や信念だけでは立ち行きません。幸い映画ではそれほど酷いシーンには至っていないので助かりました。
枕営業をほのめかすプロデューサーに毅然としてはねつけるローラも立派、ただ、あの状況では仕事をとる母親というのがリアルでしょうから、裏の現実が頭をよぎります。
あえて一線を越えないことで描かなかった深刻な現実を喚起させる手法は巨匠ならではの手腕にも思えます。
一番辛かったのはアニーでしょう、望まぬ妊娠だったのかも知れませんが白人の子を宿したことで娘にも反発され、唯一願いの叶ったのはお葬式、娘のサラが棺に謝罪する脚色は胸をうちます。
映画から半世紀以上たった今でも状況が好転したとは言い難い現実に人の業の深さを感じますが、問題に真摯に向き合うハリウッドの良心は「ドリーム」や「グリーンブック」などの良作に脈々と受け継がれています・・。
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