哀しみの街かどのレビュー・感想・評価
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アルパチーノはアルギン男から帰還できるか?
お薬は駄目らしいが、
彼らを終い迄は責め込まない撮り手の緩やかな視座が好きだ。
だから秀作。
ここから狼たち〜まではツルツル悩める初々しさが売りだったアルパチーノ、
どの作品を境に今のようなアルギン男になってしまったのか。
エレンバーキンとのあれからか。
パチーノとキティ・ウィンの演技
「スケアクロウ」のシャッツバーグ監督、アル・パチーノ主演で期待したが、感銘まではいかず。題材自体が好みに合わない。それでもパチーノの演技に呼応する相手役のキティ・ウィンの演技に見惚れる。バーバラ・ハーシーに失礼ながら、彼女を一寸上品にした感じの女優さん。パチーノ31歳の初主演映画ですでに、当然だろうが完成された演技力を見せる。
アル・パチーノ
ニードル・パークとは麻薬中毒患者のこと。ニューヨークのロケがそのままリアリティを描いている。アメリカン・ニューシネマの流れなんだろうけど、そこにはもう反戦やヒッピーの文化は何も見えない。ただ堕落したジャンキーの悲劇があるだけだ。アル・パチーノのショック症状は新人にしてはかなりの演技賞ものだ。
盗みが失敗してボビーがムショに入ってる間に、ヘレンは売春してヤクを手に入れていた。出所したら田舎で暮らそうという彼女の意見にに最終的には応える形になるが、結局はヤク中毒に逆戻り。何度も裏切られ、刑務所にも戻り・・・物悲しい不毛の愛だけが残った。
時系列通りに進み、途中経過をかなりカットしてあるのが、ジャンキーからみた散文調になっていて心地よい。ラストの出所シーンも唐突すぎるが、2人がまた同じ生活を繰り返すんだと想像させる。
「あぶり」をやる新人の頃のアル・パチーノ
「あぶりをやりました」とのクスリで捕まった有名人の供述を聞いたとき、真っ先にに思い出したのがこの映画だ。ヘロイン中毒者を描いているこの作品の中で何度も出てくるのが、ヤクを水を浸したスプーンにのせ、下からアルコールランプであぶり、それを注射器に吸い上げて体にうつ、というシーンだ。あの人もこんなことをやっていたんだろうなあ、との想像を容易にすることができる映画なのである。
それはともかく、この作品の見どころは「ゴッドファーザー」で鮮やかに登場する前のアル・パチーノが、うらぶれたヤク中の若者を見事に演じているところだ。この映画の中でアル・パチーノはクスリの魔力に一度とりつかれると、二度と離れることのできない、中毒者の思いや心の内を実に細やかな演技でスクリーン上に見せる。私は、この作品は「ゴッドファーザー」の後に見たが、「ゴッドファーザー」よりも演技そのものは上、と感じたほどだ。
名優と呼ばれる役者さんならば、演技の歴史も見てみたくなる。その意味でこの作品は、とても内容が重く、見ていて辛くなってくるのだが、アル・パシーノという名優が誕生する瞬間が見られる、貴重なものではないかと思う。
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