「カサブランカは永遠」カサブランカ 山川夏子さんの映画レビュー(感想・評価)
カサブランカは永遠
歴史的名作『カサブランカ』。フラれた男リック(ハンフリーボガード)が見ていられなくて、とはいえ彼の目の前にイングリッドバーグマンが恐ろしいほど綺麗で、大人の恋愛って辛すぎる~!!
初めてカサブランカを鑑賞したのは中学生の時で、大人の恋なんかしたくない!と本気で思いました。ただ、楽しくてハッピーで幸せで、それじゃいけないの?!と、大人が映画『カサブランカ』を評価すればするほど、悲しい恋愛をイイ!という大人の気持ちが分かりませんんでした。
彼のカフェで演奏されているカサブランカのテーマソング『As Time Goes By 』が最高に切なくて、家のピアノで何度も何度も練習して、高校生の頃にはサビの部分はピアノで弾けるようになりました。
第二次世界大戦の詳細について学校でちょうど習っていたので、ナチス・ドイツに翻弄されたヨーロッパの人々の困難や、モロッコがどういう場所で、アメリカ人がどういう立ち位置でヨーロッパにいて、モロッコで店をやっていたのか、この映画を観て胸をいためて、映画の背景として歴史を学ぶことになりました。
イルザは薄情な女性なのか、可哀想な女性なのか、あまりにもリックが可愛そうすぎて、あんなにカッコいいのに。ジュリーが「ボギー!ボギー!あんたの時代はよかった」と歌ってるボギーが、カサブランカのハンフリーボガードのことだと、一緒に映画を観た父から教えてもらって、「男がピカピカのキザでいられた」リックの生き方を父もカッコいいと思っているようでした。人生は傷だらけになっても、それでも愛を貫くのが「かっこいいんだ」というのが、父も母も、周りの大人も同じ意見で、私は出来れば、人生で傷つくのはなるべく避けたいと思っていたのに、齢50を過ぎて、傷つかない人生なんてないし、果敢に人生に挑戦したらボロボロになるのは当たり前のことなんだと今は分かっています。
「傷だらけになっても尚、愛し続ける」カッコよさも、今では理解できます。
久しぶりに見たリックは、悩みに悩んで、彼女を助けた。彼女もリックに助けを求めた。
当時はなんて図々しい女性なんだと感じたのですが、「愛」を知ってるから、頼めたんだなという逆説的な心の有り様も今では理解できるようになりました。
10代の頃初めてみたカサブランカを、20代、30代、40代、50代と体的に見返していますが、50代でカサブランカを見返したら、ものすごく甘酸っぱい気持ちになりました。人生は複雑で、ルノー署長のような生き方も学びが多かったです。
40代の頃、石原裕次郎さんの映画『夜霧よ今夜もありがとう』を観た時に、(あれ?これってカサブランカじゃ…)と驚いたのですが、カサブランカを原作に作られた日本映画なんだそうで、カサブランカは見てなくても、夜霧よ今夜もありがとうに胸をわしづかみにされた日本人も少なくないでしょうし、20代のOL時代に、オヤジ世代の先輩方に連れられてスナックに行って「夜霧よ今夜もありがとう」を歌うオジサマの歌に拍手をする係などをやらされていましたが、皆さんも愛する女性を失ってハートブレイクな経験をしたり、辛い思いを乗り越えながら生きていたのかな…と思うと、人は皆、辛い思いを抱えながら頑張って生きてるんだから、優しく接して、助け合いながら生きたいなと思いました。