怪物の花嫁

劇場公開日:

解説

謎の巨大怪物を操るマッド・サイエンティストをめぐるホラー映画の小品。監督・製作・脚本は「プラン9・フロム・アウタースペース」「グレンとグレンダ」で知られる“史上最低の映画監督”こと、エドワード・デイヴィス・ウッド・ジュニアで、彼の正式劇場公開第3作にあたる。エグゼクティヴ・プロデューサーは精肉業者でスポンサーのドナルド・M・マッコイ、撮影はウッド作品の常連で実は色盲だったという「グレンとグレンダ」のウィリアム・C・トンプソンとテッド・アラン、音楽はフランク・ワース、編集はマイク・アダムズ、特殊効果はパット・ディンガがそれぞれ担当。主演は本作が実質的な遺作となった「魔人ドラキュラ」など往年の怪奇映画スター、ベラ・ルゴシ。共演はスポンサーの息子だったため出演できたトニー・マッコイ(共同製作も)ほか、レスラー出身のトー・ジョンソン、ポール・マルコら、ウッドとは私生活でも友人だった面々が顔をそろえる。

1956年製作/アメリカ
原題または英題:Bride of the Monster
配給:ケイブルホーグ
劇場公開日:1995年10月21日

ストーリー

田舎町の沼で謎の失踪事件が続発。土地の警察のディック・クレイグ警部補(トニー・マッコイ)が捜査に乗り出そうとしたところ、そこへ新聞記者をしている婚約者ジャネット(ロレッタ・キング)が現れる。ネタをつかんだ彼女は沼のほとりの屋敷が怪しいとにらみ、調査をはじめるがほどなく何者かに捕らわれる。屋敷の主はヴォーノフ博士(ベラ・ルゴシ)というマッド・サイエンティスト。彼女を捕らえたのは博士の忠実な下僕で、姿形は野蛮だが、純粋な男ロボ(トー・ジョンソン)だった。時を同じくしてヴォーノフを追って屋敷を訪れた怪奇現象の権威、ストロースキー教授に、ヴォーノフは自らの原子力に関係する独自の研究の成果により、いずれ全世界を彼が創造した原子の超人が征服するだろうと演説をぶつ。ストロースキーは、博士が造った大ダコの餌食となり、いよいよ狂気の魔手がジャネットに及ばんとしたとき、ジャネットに魅せられたロボが博士を制止。そこへディックが登場。大格闘の末、自ら実験台になった博士は強力なパワーで逃亡、しかし駆けつけた警官らに囲まれ、結局沼に転落、大ダコと大格闘の末果てるのであった。

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映画レビュー

1.5嘘偽りない「エド・ウッド」のドキュメント

2023年2月24日
iPhoneアプリから投稿

何かありそうで何もない、面白くなりそうでちっとも面白くならないこの感じ、まさに全盛期のエド・ウッド映画だ。

山中の実験施設に住まう怪しげな老博士もチベットから連れてこられたという唖の巨漢も湖を統べるタコ型の怪物も、キャラクターとしては文句なく際立っているのに、それらの交差地点に紡ぎ出される物語はほとんど脈絡を欠いていて受け手を寄せ付けない。そもそもトピックが多すぎて、何を、あるいはどこを見るべきなのか見定まらない。あっちこっちに散開した諸系列は合流を果たすことなく不完全燃焼に終わる。ワニと戦うくだりなんかは本当に意味不明だった。しかもそこにルチオ・フルチの『サンゲリア』におけるゾンビvsサメの唐突なデスマッチ描写のような露悪的な攪乱の意図はない。エド・ウッドは至極真剣に、それを物語的必然であるという確信のもとでワニを登場させている。そのあまりの真剣ぶりに思わず一瞬たじろいでしまう。いつも通りの鑑賞のモードでは目の当たりにすることのできない何かが実はそこに顕現しているのではないか、という反省にも似た予感が頭をよぎる。もちろんそんなことはなく、むしろ丹念に見入れば見入るほど無数の粗が見えてくるのだが、一瞬でも受け手にそう思わせた時点で、フィクションとしては大成功なんじゃないかと思う。

作品の出来という点に関して言えば、この程度の映画なら世の中にごまんと転がっている。それこそビデオやDVDにすらならないような、アマゾンプライムの最下層に堆積しているような映画というのはどれも等しくつまらない。ゆえに作品の不出来を力点にエド・ウッド映画を評価する傾向を私は支持しない。重要なのは、エド・ウッドという監督の、映画に対するひたむきな情熱だ。

確かにこの映画は確かに出来が悪いし面白くもないが、エド・ウッドはそう思っていない。自分の創り上げた虚構の強度を心の底から信じている。何であれ強い確信に基づいた作品というのは人を惹きつける。ましてや技巧や自己弁護といった中間物が一切ない彼の映画は、それ自体が彼の存在の嘘偽りないドキュメントとして燦然と光彩を放っている。無数の「駄作」の墓場から、なぜ彼の映画だけが掘り起こされたのか。その理由は、おそらくここにある。

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