「キモ男のトライアスロン」泳ぐひと きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
キモ男のトライアスロン
近ごろ気のせいか「泳ぐひと」やら「泳げないひと」など、スイミング系の映画が多いような気がする。
どんなものかとレンタルした1本。
メンヘラが泳いで三途の川を渡る話だった。
きらめく夏のシーンはプールの水も穏やかで、温かな微笑みや少女たちとの明るい交流に包まれているのだが、
人生の秋を迎え、同級生、同僚、元愛人、近所付き合いと、プールの水はこんなにも冷えきってしまった、まるで尖った氷の海だ。
これが”世間の水“だ。
彼の狂気に気付いてからは物語のすべてがサイケデリック。
この時代のアメリカンニューシネマは、当地でのバブル景気と破綻、富める者と負け犬の分断、二つの戦争の功罪、光と闇の社会を見つめてきた。
走り続けて 泳ぎ続けて、「ただただ家に帰りたい」という疲れ切った男の願望をスクリーンに見ながら、氷雨に打たれて溺死していく現代人の孤独を見た思いだ。
自死。
あるいは過労死。
実は映画の最初から、男の霊が彷徨っていたようにも見えて仕方無い。
誰もいない
空き家のドアにすがりつく姿は、どこか自分と重なった。
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