劇場公開日 1995年6月24日

「多文化としてのカテゴリ」音のない世界で laikaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0多文化としてのカテゴリ

2017年4月10日
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ろうあ者の生活を追ったドキュメンタリー。

ろうあ者というとハンディキャップの面でしかとらえていなかった。
彼らの日常風景をこの映画で観て、手話が障がい者の為の単なる代替言語ではなく、音に依存しない独自の豊かさをもったコミュニケーション手段だと感じた。
たとえば、海外で外人のろうあ者と出会った場合について。辞書に首っ引きになってもコミュニケーションをとれないが、手話であれば2日もあれば話せるようになる、と語っていたことが印象的だった。
複雑なボディランゲージである手話は、囁きや怒鳴り声、喜びの声などが聞こえてくるようで、感情豊かに見えた。

音声をともなう言語の方が手話より優れているというわけではない。
ろうあ者が健常者と比べて、人生の全体が劣っていることではない。全く変わらなくもあるし、異なる部分も勿論ある。
健常者に比べて足りない部分がある、というのではなく、ある種多文化のカテゴリーとして感じられるような、瑞々しい価値観を感じた。

laika