「2作目、3作目は流石に…」男と女(1966) あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
2作目、3作目は流石に…
アヌーク・エーメの美しさに言及するレビューが多いので私はジャン=ルイ・トランティニャンについて少し触れます。
1930年生まれのジャン=ルイは、同じく30年代生まれのジャン=ポール・ベルモンドやアラン・ドロンと一緒に全盛期のフランス映画(ヨーロッパ映画)を牽引した俳優です。ジャン=ポールとドロンは「ボルサリーノ」で共演したこともあるし、ともにジャン=ピエール・メルヴィルの作品に出演したこともある(ジャン=ポールは「いぬ」、ドロンは「サムライ」)ジャン・ギャバン以降伝統のフレンチフィルム・ノワールを代表する役者だと思っています。ジャン=ルイは他の2人ほどではないにせよフィルム・ノワールの匂いがする役者ではあるのですが(ちなみにフィルム・ノワールは、私の定義では「犯罪者の視点、立場から犯罪を描いた映画で、犯罪者の成功と挫折、その内面の暗部を掘り下げたもの」ということになります)どちらかというと積極的に犯罪を犯す役割というより巻き込まれるタイプの役が多く(「暗殺の森」とか「狼は天使の匂い」とか)内面の暗さとそれに伴う男の色気とかの表現がやや薄いのかもしれません。そんな役しか回ってこなかったのかそれとも複雑な性格表現の演技ができなかったのかは不明です。「男と女」はもちろん犯罪映画ではないのですが、過去を引きずる男女の立場から、アンヌは葛藤し割り切れない姿をみせる一方で、ジャン=ルイ(役名同じ)は今の恋愛に正直というかあまりにも無邪気で段取りは良い人間に描かれています。このジャン=ルイの造形の甘さがこの映画の瑕疵でありクロード・ルルーシュが後年に渡ってもドラマ演出が弱いと言い続けられた原因の一つだと思います。
確かに、映像は美しいし、役者も素晴らしいけれどこの設定、演出が反復されると思うと86年版や2019年版はあえて観ようとまでは思わないということで未見です。