劇場公開日 1976年6月19日

「パニック映画ではありません 本格サスペンス映画です」オスロ国際空港 ダブル・ハイジャック あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0パニック映画ではありません 本格サスペンス映画です

2021年1月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

これは凄い!傑作中の傑作!
どうせ70年代のパニック映画でしょ
ショーン・コネリーが主演だからまあ観てみようかと舐めてました
パニック映画ではありません
本格サスペンス映画です

余分なものは何もなく、過剰なものもなく、冗長なシーンは皆無
体脂肪率ゼロみたいな作品です

のっけの英国大使を人質にした大使館立てこもりシーンからして、襲撃シーンを絶対撮りたくなるものですが、不要とバッサリ一切省かれているほどです

銃撃シーンは最後の最後に一瞬で終わるまで一切ないのです
それでもサスペンスの緊張感はかなり高いまま全編維持しつづけます
それできっちり90分以下にまとめています

かといって不足もない
主要登場人物は敵も味方も全てプロフェッショナル
アマチュアは誰もいません
淡々とやるべきことをやるのです
ド派手な撃ち合い、爆発、怒鳴りあい、パニックシーン といったものを期待していたなら肩透かしだろうと思います
しかし大人向けの本格サスペンス好きの方ならば、ハラハラドキドキしどうし、大満足できる90分間をお約束します

うおおっ~!そうだったのか!と、のけ反るようなどんでん返し
というかハイジャックの真相!

しかも主人公がハイジャックの真相に気付くのも、そのヒントを観客にも、ん?と思わせるように平等に見せており、後だしジャンケンみたいな卑怯なことはしないのです

それがわかってからも、逆に一体これこらどうなるんだろう?とラストシーンまで手に汗握って食い入るように観ることになるです

サスペンスものを沢山観てきてる多少スレているような観客でも、いやそういう人こそ却って展開には度肝を抜かれるはず

何故オスロ国際空港なのか?
それはノルウェーのフィヨルドの深い谷が織り成す多くて長くトンネルがストーリーに不可欠だったわけです

ジェリー・ゴールドスミスの劇伴も洋画らしい格調があり気分が高まります

何気に配役もよく、コネリー以外の脇役陣も無名の役者が多いわりにみな良い仕事をしてます
そして主要登場人物だけだなく端役に至るまで徹底して英国人は英国人らしい顔つき、ノルウェー人は北欧人らしい顔つきで選ばれています

傑作です!

「人命は地球より重い」という福田首相の迷台詞でテロリストの要求に屈し、世界中から批判されたダッカ空港日航機ハイジャック事件は本作の3年後の1977年9月のことでした

日本には本作の主人公のようなガッツも、英国のような狡猾さも無かったのです
本作のノルウェー内務省の役人のように、安易なこと無かれ主義でしかなかったのです

映画のようにはいかないよということでしょうが、しかしその翌月に発生したルフトハンザ航空181便ハイジャック事件ではソマリアのモガディシオ空港で西ドイツ対テロ特殊部隊が強硬突入して制圧しているのです

日本の情けさなさが 世界にさらされたのです

あき240