大いなる西部のレビュー・感想・評価
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素晴らしい西部劇で、一大叙事詩の傑作だ。
1870年代。東部の紳士ジェームズは、テリル少佐の1人娘パットと結婚するため、テキサス州にやってきた。少佐は、大地主ヘネシーと、水源を争っていた。水源の所有者は、パットの友人で学校教師のジュリー・マラゴン。
ジェームズは、ジュリーから水源を購入し、公平な分配を提案する。その一方、少佐の牧童頭スティーヴは、パットを愛しており、ヘネシーの息子バックは、ジュリーに恋しているが、横暴な男だ、、、。
争いを避け、平和的に解決しようとする主人公に対し、2人の有力者は、暴力でしか解決できない、古い時代の価値観を体現する存在だ。破滅的だが、そういう生き方しか出来なかった。
広大な国土の、ほんのわずかな点の争いだ。しかし、いかに小さな存在でも、そこに根差した者たちを、誇り高く、高揚感あふれる演出で描いた、一大叙事詩の傑作だ。
ヘネシー親父が、主役を食ってるね。
いい映画を観ると、エンディングで背中がゾクっとする。
本作もそうだった。東部男のマッコイが、西部の荒くれ者の中で、
自らの信念を、かなりの度胸で貫き通す。
二つのシーンが印象に残った。
テリル一派の部下たちが、ヘネシー一派との争いを無用な争いとし、
一度はボイコットするが、1人でも闘う姿勢の親分に結局は従う。
理屈よりも心で感じる、男たちを見た。
もう一つは、丸腰で直談判に来たマッコイを意気に感じる一方、
我が息子の不甲斐なさ情けなさから、息子を銃殺しながらもその息子を抱くシーン。
65年前の作品のようだが、カメラアングルや、音楽など、古さを全く感じないし、
男は、勇敢であれ、優しくあれ、公正であれ、とのメッセージが
伝わってきた。
新時代のテキサスの夜明けを、対比する相関図で描いた濃密な人間ドラマ
舞台は、南北戦争後の1870年代のテキサス州サンラファエル。アメリカ横断鉄道が開通した頃でもまだ近代化される前の古い西部の因習が強く、ジェームズ・ディーン主演の「ジャイアンツ」にある石油ブームの30~40年前になると見られる。東部から元船長のグレゴリー・ペックが婚約者のキャロル・ベイカーに会いに遥々訪ねることから物語が始まる。ペックの暴力否定の価値観が終始一貫した主題だが、拳闘の男の対決や旧時代の紳士の決闘のシーンも組み込まれた、見応えのある西部劇になっている。また、すべての登場人物の交錯した対比の相関図を展開させる、予想困難な面白さがある。東部と西部の物事の解決法の違いの非暴力と暴力。ベイカーを挟んだペックと牧童頭チャールトン・ヘストンの恋敵。水源のある土地ビッグ・マディの利権争いで睨み合うレリル家とヘネシー家。両家の親子関係にある世代対比。特にヘネシー家の父バール・アイブスと息子チャック・コナーズの愛憎劇が深く悲しい。そして、婚約者ペックに不信感を募らせるベイカーと徐々にペックの信念に共鳴し親愛の情に変わるジーン・シモンズの女性の比較。5名の脚本家によって練られた、それら登場人物の心境の変化が見事に描かれている。悠々としたワイラー監督の演出で描かれた広大なテキサスの大地を舞台に、濃密な人間ドラマが繰り広げられる。カメラワークやカメラアングルの無駄の無さや表現の深さ、カット繋ぎの自然さと緊迫感のメリハリ、そしてユーモアとシリアスのバランス。名匠ワイラーの演出美が素晴らしい。演技面では、アカデミー助演男優賞のバール・アイブスが抜きんでた存在感と演技力。ペックもシモンズもヘストンもコナーズもそれぞれに良い。ヘネシー家と比較して悪役に回るテリル家のチャールズ・ビックフォードとキャロル・ベイカーは少し損な役柄であった。
ラストのクライマックスの、一人谷に馬を進めるビックフォードを捉えたシーンでは、岩陰からヘストンが現れ、続いて数人の牧童の集団が追い掛けてくるのをワンカットで撮る。その緊張感を生む演出がいい。そして旧世代の対決の結末を俯瞰で捉えてアップカットを挟まない客観的な視点が、時代の終わりを冷静に印象づける。3時間に及ぶ長尺の大作だが、ワイラー監督の演出を堪能していれば、ダレルことなく観終えてしまう名作である。
主演がグレゴリーペックでなければならない理由
西部劇の記号として、世界中の人が思い浮かべる風景はモニュメントバレーなら、音楽は本作のテーマ曲だろう
それほど有名な曲だ、素晴らしい名曲
本作ではモニュメントバレーは映らない
しかし本作で写る風景の岩山の雄大さ。平原の広大さは、ジョンフォード監督の捜索者を上回る雄大さをみせる
序盤の猛スピードの馬の背中でやる曲乗りはジョンフォード監督の駅馬車を思わせるぐらいの迫力
本作を観たならば最初に浮かぶ疑問はこうだろう
主役が西部劇にグレゴリーペックなのはなぜか?
彼はおよそ西部劇に似合わない俳優だ
ジョンウェインやクリントイーストウッドのようなヒーローでは決してない
彼の演じる主人公はガンベルトを腰に下げないし、テンガロンハットも被らない、争いを好まない東部から来た紳士だ
彼以外のテキサスの人間は教育のある一人を除いて男も女も全員、力しか信じない、もめ事は力で解決するものと考えている、正に西部劇そのままの世界だ
しかし、それこそはアメリカの地金、一皮剥いた本当の姿なのだ
テキサスや西部だけではない
それ故にグレゴリーペックの主役がやったみせたような在りたい社会へ変わって行かなければならない、そう向かって努力して行くことが大切のだ
それが本作のテーマだ
つまりグレゴリーペックはアラバマ物語、紳士協定でみせたように、変わるべき在りたいアメリカの姿を体現する記号なのだ
だから主演は彼で無ければならなかったのだ
グレゴリー・ペックがクールな西部劇。撃ち合いよりも長い長いファイト...
グレゴリー・ペックがクールな西部劇。撃ち合いよりも長い長いファイトシーンが印象に残った。どうしてパットと婚約したのか不思議だかそうじゃないと物語が始まらないか…。
近代社会成立前の最後のカタルシス
総合:70点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 70
ビジュアル: 75
音楽: 70
広大で可能性を秘めているとはいえ厳しい開拓の前線。そして国家が成立して文明化されてきているとはいえ、東部から見ればまだまだ正義や法治や秩序が確立しきれていない辺境の世界である。だからその世界に生きるのは簡単なことではないし、勇気や行動力や力が要求される。
秩序のいち早く成立した東部からの男がそのような西部の混沌の世界にやってくる。それはまるで西部の混沌の世界が終わり、秩序だった近代社会に変わる前触れであるかのようである。しかし最後には結局は暴力による悲劇的浄化が必要なのだろうか。銃撃戦の結末は都合が良すぎるようにも感じて個人的にはそんなうまくいかないだろうと思ってしまい評価にマイナスなのだが、それも西部劇のお約束なので仕方ない。
個人的には敵対する大地主ルファス・ハナシー役を演じたバール・アイヴスが、頑固で古い人ではあるものの筋の通った男ぶりを見せていて悪くないと思った。
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