劇場公開日 2020年10月30日

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「「悪ガキ」と言われた男の顛末」オー! とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「悪ガキ」と言われた男の顛末

2023年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

単純

寝られる

「コブラ、ルパン三世、ジャッキー・チェン氏に加えて、加えてトム・クルーズ様に影響を与えた俳優」と聞いて鑑賞。
 勝手なイメージが先行して、最初の鑑賞の時は、物足りなかった。
 もっと、ほれぼれするような格好いい主人公が見られるのかと思ったら…。

『俺たちに明日はない』を彷彿とするような転落劇。
 解説には「若きギャングの成功と破滅を鮮烈に描いた青春クライムアクション」とあるが、『俺たちに明日はない』のような激しさはない。
 近年のクライムもののようなひりひりした感覚もなく、どちらかというと緩い。
 「怪盗ルパン+カポネ」と新聞記事でもてはやされるような脱獄劇はあり。それが通るの?と驚くような手腕ではあるが、映画的な華やかさはない。
 ”成功”した姿が、ちっとも満足そうではないので、”成功”?と思ってしまう。
 また、恋人を守れなくて、相手のなすがままにさせておいてと、”格好いい”を念頭に置いていると腹が立ってくる小者感。
 ラストも、ハリウッドのような派手な打ち上げ花火で終わらない。”悪”を気取った男の成れの果て。ジャンヌ・モローさんの『危険な関係』のラストを思わせるようなシビアさ。
 予告にある説明文「”怪盗ルパン+カポネ”と呼ばれた男の哀しき生き様」という、”哀しさ””やるせなさ””男の幼稚さ”だけが余韻として残る。

それでも、初めから”大物ぶっている小者”の物語として観ていると、よくできている。
 ベルモンドさんて、こういう役もなさるんだ。
初見では、もっと短くサクッとしてもと思ったりもするが、ある意味冗長に、一つ一つのエピソードを丁寧に描いている。
 親友への、カーレースへのこだわり。「金じゃない。命かけているんだ」
 恋人との関係の変化。ー成熟した”愛”を知らない男。
 記者との関係。ー記者側の変化。
 警察との攻防。ーいかにも”切れ者”っぽい風貌が笑える。
 元仲間の中での立ち位置。
いくつもの糸が絡み合って物語が進んでいく。
ただ、濃厚に描くわけではない。ベルモンド氏のその時その時の表情も、見逃してしまうと、話が薄っぺらくなる。

アクションも、「上記の人々に影響を与えた」目線で見ると、この映画では控えめ。車を使って逃走もあるが、カーチェイスというほどではない。「その街中で撃ち合うか?警察も」という銃撃戦もあるが、今の目線で見ると、もたついている。
 特筆すべきはレーシングカーでのレースか。ベルモンド氏ご自身もレーシングカーを操ると聞く。ご自身で運転したのだろうか。

とはいえ、この映画を特別にしているのは、当時のファッション・インテリア。
あの、鯨のソファー・ベッド?おこもりテント?に始まるベネディットのインテリア・センス。
フランソワの部屋のインテリア・センスもよい。
ベルモンド氏の着こなし。
新聞を包んでプレゼントの粋。
カーマニアではないけれど、おもちゃのようなフォルムの車たち。
当時のエスプリを堪能。”外国”へ旅行した気分になる。

とみいじょん
talismanさんのコメント
2024年7月12日

「大頭脳」、とみいじょんさんおっしゃる通りですね!癖も強いが豪華なキャスティングでそれそれがいい味出して、その中で大活躍して笑わせてもくれるベルモンドは「自分、自分」でなくて自然ですね!なるほど!と思いました

talisman
talismanさんのコメント
2024年7月11日

とみいじょんさん、コメントありがとうございます。ベルモンド傑作選の1から順番に見て、よくわからなかったり良さがわからなかっので何度も見た映画もありました。ほとんどベルモンド中毒になってました。ベルモンドは若い時も年とってからも子どもっ気が抜けない憎めない人です。亡くなった時、国葬されたのもよくわかります

talisman
talismanさんのコメント
2024年7月10日

この映画もベルモンドも大好きです。最初に見た時は、ちょっと暗い雰囲気がベルモンドに合わない気持ちがしました。でも役の幅が広い、あんなに若いのに演技が素晴らしい、音楽が効いていてる、二人の車とファッションが美しいなど、映画館で何度も見て、今、思い返してもいい映画だなあと思います

talisman