「「懇切丁寧な解説つきホラー映画」wと化したエクソシスト後日譚」エクソシスト3 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
「懇切丁寧な解説つきホラー映画」wと化したエクソシスト後日譚
「エクソシスト」はアカデミー賞で作品賞、監督賞等10部門でノミネートされたものの、受賞したのは脚本、音響の2部門だけ。その脚本賞を受賞した原作者・脚本家ピーター・ブラッティが続編「エクソシスト2」を見て、何を思ったかは容易に想像がつくw
毀誉褒貶というより悪評紛々たる結果だった前作の不名誉を雪ぐべく、自ら原作・脚本のほか監督までが務めたのがこの「3」である。
「1」の役者で今回も出ているのはデミアン・カラス神父役のジェイソン・ミラーくらいだろう。ただ、キャラクターは「1」と共通なものが多く、キンダーマン警部が今度は主役として登場。奇怪かつ反宗教的な意図を感じさせる連続殺人事件の捜査を中心に、彼とダイアー神父との友情を交えつつ、最後にはカラス神父=双子座殺人鬼との会話を通じて本作が「1」の後日譚だったことがわかる、という仕組みである。
脚本家が同じだけに、日常の些細なところをしっかり描いて、悪魔の登場する非日常とのコントラストで恐怖を高めるという同じ手法を取っている。
ただ、いかんせん「1」の描いた日常が絶えず不幸や破綻と裏表で、いつ何が起こるか冷や冷やさせる緊張感を孕んでいたのに対し、本作の日常は頑固オヤジ丸出しのキンダーマン役ジョージ・C・スコットと、円満でくだけたダイアー役エド・フランダースとのほのぼのした交流に緊張感のカケラも感じられない。
また、悪魔に取り憑かれた双子座殺人鬼の仕掛ける連続殺人のシーンも悪くはないが、そのほとんどが会話で説明されるためインパクトに欠ける。
さらにキツイのはクライマックスシーンがキンダーマン警部とカラス神父=双子座殺人鬼との会話という点。
彼らの話から「1」で死んだカラスが何故まだ生きているのか、何故双子座殺人鬼と一体化しているのかがわかるものの、いちいち殺人の方法を詳細に説明して、サクシニルコリンなる神経麻痺剤を使ってどうしたこうしたとか、どういう人間が遠隔操作しやすいかとか、カラスの脳を再生するのに15年もかかったとか……双子座殺人鬼が懇切丁寧に説明すればするほど、悪魔の不気味さが、怖さがどこかにすっとんでしまうのである。
どうせ悪魔の仕業なんだから理路整然と解説なんかしなくてもいい、それよりもっと怖がらせてくれと不満が募ってくる。
最後にはモーニング神父も入ってくるものの、どうにもキリスト教の宗教テイストがないまま、最後の決着の仕方も納得出来はするが、尻切れトンボの印象を否めない。
「エクソシスト」はホラーにリリシズムを湛えた傑作、「エクソシスト2」も個人的評価はSFタッチの超能力者対悪魔という構図にリンダ・ブレアの魅力を満載した傑作、しかし本作はどこといって特徴のない凡作と化したのだった。