「新機軸で向かえたラスト」エイリアン4 Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
新機軸で向かえたラスト
前作から200年後の2470年。驚く事に第一作から何世紀も経った世界が舞台となっている。軍事関連の船で目が覚めたリプリーだったが、オリジナルのリプリーは前作で死亡しており、採取されたリプリーのDNAを元にクローンを作っているという設定である。本作ではゼノモーフらは飼育下に置かれており、過去作からは想像が出来ない程ガラリと世界観が変わっている。それだけでなく、目覚めたリプリーはもはや人間ではなくスーパーパワーを持つ様になり、ゼノモーフをいとも簡単に倒すという、後々登場する「バイオハザード」シリーズのアリスさながらの存在である。
この設定だけでもシリーズファンは「これが観たかったんじゃない」と思うだろうが、良くも悪くも"今風"な作品になったという事なのだろう。だが、ジャン=ピエール・ジュネ監督は最後の最後で新機軸のプレゼンテーションをしている様だ。それが顕著に現れる例がやはり終盤に登場した「ニューボーン」の存在だ。この期に及んでまだそんな展開を見せるかと思うが、ニューボーンの存在を含め、ビジュアル的なショックはかなりインパクト大だと思う。技術的な進歩も相まって、シリーズ中最もゼノモーフを気持ち悪く描いている。また、登場人物らのビジュアルも今考えたら凄く、本作のメインキャラとなる御一行は、いわば宇宙海賊なのだが、「ヘルボーイ」等のギレルモ・デル・トロ作品ではお馴染みの「くせ者キャラ」ロン・パールマン初め、濃いメンバーが揃っている。彼らの織り成す軽快なノリと、ゼノモーフを研究する変態科学者の気持ち悪さが何とも言えない心地悪さを演出している。流石人物の描写が得意な監督ならではの設定だろう。だが、監督自身本シリーズは「観ていない」とはっきり述べたように、確かに"観てない人が作った映画"感は強い。前作までは残っていたシリーズの"重み"が無いように感じるのは残念な所かもしれない。97年に劇場公開されたバージョンは107分というシリーズ中最も短い本編で描かれる為、どうしてもサクッとした印象になるが、エンドロール直前は衝撃的な姿の地球で幕を下ろす119分の完全版が個人的にはオススメである。
内容的には変化はないが、どちらを鑑賞しても、ニューボーンがちょっと可哀想に感じるのは私だけだろうか。