「極東の町スーチャン,スターリンを頂点とするソヴィエト連邦の施政下で...」動くな、死ね、甦れ! しょうけらさんの映画レビュー(感想・評価)
極東の町スーチャン,スターリンを頂点とするソヴィエト連邦の施政下で...
極東の町スーチャン,スターリンを頂点とするソヴィエト連邦の施政下で囚人や捕虜や戦争で体の一部を失った人たちの中,たくましく生きる主人公を描いているわけではない.いや,確かに主人公はたくましく労働地区でお茶を売って稼いだり,夜遅くまで働く一人親の迎えに行ったり,窃盗団の中で上手く逃げおおせたりしてきた.しかしそれでも,日本の歌謡曲や鈴の音と共に映画の中で不穏な気配が常に忍び寄る.それは足が書けた将校の件かだったり,夜更けに人が燃える明かりであったり,土と小麦粉をこねてほおばる学者だったりする.しかし,具体的にその現状の悲惨さを摘発することはしないで,ただ目の前の悲惨な状態を客観的に描くことに終始している.子供を撮影するシーンが多いものの,カメラの目線は常に大人の視線の高さである.その冷たい視線とは対照的に,被写界深度が狭くてボケを多用しており柔らかい印象を持たせるシーンが多くみられる.また,暗闇の中でスポット的に照らす写し方によって不穏さだったり,時には登場人物の顔を強く印象付けることで暖かさを表現しているときもある.描いている対象も撮影の仕方も洗練されている映画だった.
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