劇場公開日 2019年9月27日

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「水膨れだと批判されても仕方ないだろう 緩急と言うものがないのだ とはいえ見応えは大きい」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0水膨れだと批判されても仕方ないだろう 緩急と言うものがないのだ とはいえ見応えは大きい

2021年10月11日
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鑑賞方法:DVD/BD

165分版で鑑賞
この3時間近い長さのものがオリジナル

1969年の日本公開時は、邦題が単に「ウエスタン」と縮められただけでなく、本編まで141分に短縮されたそうだ
理由は観れば分かるだろう

175分版のロングバージョンも存在するらしいが、それを観たいとは思わない
165分版でも充分に長過ぎる
これ以上長くして何の意味があるのか分からない

西部劇の金字塔とされている
確かに従来の西部劇とは一線を画したものだ

1966年の「続・夕陽のガンマン」のあと、西部劇の本場アメリカに進出して撮った作品
今までのスペインなどでのなんちゃって西部ではなく、本物のアメリカの西部での撮影だ
モニュメントバレーを画角の広い明るさレンズで美しく撮影している
美しいカメラは、癖のある俳優達を超どアップで捉えている
スケールの大きい西部の街並みのセット、鉄道などのシーンは壮観で、素晴らしい映画体験だ

物語はシンプル
筋だけなら90分でまとまるだろう
それを空気感や情念といったものをたっぷり見せたら165分に膨れ上がったと云うことだ

水膨れだと批判されても仕方ないだろう
緩急と言うものがないのだ
とはいえ見応えは大きい

西部劇の世界はこうして終わっていったのだ
それが本作のテーマだ
だからアメリカの良心を代表するヘンリー・フォンダがラスボスとしての悪漢を演じるのだ
ヒロインも強く人間として確立しているのだ

その同じテーマをクリント・イーストウッドが撮っている
「荒野のストレンジャー」と「アウトロー」だ
二つとも師匠の言いたかったこと、取りこぼしたものも拾いながら、もう少し短く表現できないものか挑戦したものだと思う
結局、2作品になり合計すると師匠より長くなってしまったというオチになるのだが

主人公はチャールズ・ブロンソン
エンニオ・モリコーネによる哀愁タップリなハーモニカの音は耳にこびりつくものだ

彼の本格的西部劇は実は本作しかない
なのに西部劇の役者イメージが強いのは、1970年の日本の超有名コマーシャルの映像によるものだろう
本作での活躍がその男性化粧品「マンダム」のCM出演につながったと思われる
そのCM に使われたジェリー・ウォレスの「男の世界」の曲も日本独自の大ヒットとなり、ブロンソンとは不可分なものとなった
このCMは大林宣彦監督が撮影したという
YouTubeで簡単に視聴できる

「ウーン、マンダム」
この決め台詞のCMをどうしてもまた観たくなった
やはりチャールズ・ブロンソンの単純明快な西部劇が観たかったのだ

1962年の西部劇の金字塔「西部開拓史」にはとても及ばなかった

あき240