「哀感漂う西部劇の「挽歌」」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト Naoさんの映画レビュー(感想・評価)
哀感漂う西部劇の「挽歌」
セルジオ・レオーネの「ワンス・アポン・ア・タイム三部作」の一つ、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」を丸の内ピカデリーで観た。
元の邦題は「ウェスタン」だが、まさか映画館でやるとは思わなかったので、昨年DVDで観てしまったので、今回は2度目の鑑賞だが、やはり映画館で観るべき作品。
冒頭からかなりのスローペースで、人物の顔のクローズアップの多用や長回しなど、レオーネ節満載。
この映画の凄いところは、主な登場人物のキャラが立っていること。ハーモニカ(チャールズ・ブロンソン)、ジル(クラウディア・カルディナーレ)、シャイアン(ジェイスン・ロバーズ)、そして「荒野の決闘」とは真逆の悪役、ヘンリー・フォンダ演じるフランク。4人が全員主人公であり、ならず者がガンファイトを繰り広げた西部劇の不毛な大地にいよいよ鉄道が通るという、フロンティアの終焉を時代背景とした、富や野望への欲と執念に彩られた人間模様。「ウェスタン」という単純な旧邦題が逆に的確に物語っていた、レオーネからの西部劇への「挽歌」であり、映画ファン必見の傑作と言えよう。
最後になるが、実はこの映画の一番優れているのは、音楽である。モーリス・ジャール、ミシェル・ルグラン、ジョン・ウィリアムズと並んで、勝手に4大映画音楽作曲家と私が呼んでいる、エンニオ・モリコーネの、「ニュー・シネマ・パラダイス」「ペイネ 愛の世界旅行」と並ぶ最高クラスの傑作スコアである。映画全編がモリコーネ節 で彩られ、西部劇の挽歌を甘美なまでに奏でる。まさに、映画芸術の極致である。
なお、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」もそうだが、レオーネは結構ミステリタッチというか、思わせぶりな筆致を用いることがあり、感興を増している。