「歴史的名作! 4K修復のこの機会に見て良かった!!」イル・ポスティーノ ノンタさんの映画レビュー(感想・評価)
歴史的名作! 4K修復のこの機会に見て良かった!!
見終わったあとも余韻が消えず、心に深く刻み込まれる作品でした。舞台のイタリアの小さな島、純朴な主人公マリオの成長、世界的詩人パブロ・ネルーダとの交流を通じて、言葉が人に与える力を鮮やかに描き出しています。
1. 郵便配達人──「言葉」の架け橋
主人公マリオが郵便配達人としてパブロ・ネルーダに手紙を届ける役割は、時代や場所の象徴そのものです。ラジオもテレビもましてやインターネットもない島では、手紙が唯一の世界とつながるメディアです。
マリオが手紙を届ける行為は、詩人ネルーダにとっても外界との接点を保つ重要な仕事です。マリオはネルーダとの交流を通じて、表現を学んでいくことになります。
2. 主人公の成長と「詩」の力
物語の核は、主人公マリオの成長です。無口で未熟なアラ30未婚男性だった彼が、ネルーダとの交流を通じて詩の技法「隠喩」を学び、表現を得ていく過程がとても感動的でした。詩人としてのネルーダがただ一方的に教えるだけでなく、マリオ自身の純朴な感性がネルーダの心をも動かしていく対等な関係もまた見どころです。
主人公は表現の獲得によって恋を実らせるだけでなく、それは同時に自分の島の美しさや人生の意味に気づくことにもつながっていきます。言葉とは表現の手段であるとともに、自分の内面に感動を生み出すものでもあるということを教えられた思いです。
3. 主演脚本のマッシモ・トロイージのその後
この映画を語るうえで、主演・脚本のマッシモ・トロイージの存在を欠かすことはできません。彼は心臓病を抱えながらも、手術を延期してまで撮影に挑み、撮影終了直後にその命を落としたことを、見終わってから知りました。
彼の命懸けの挑戦が、映画に込められたテーマ「表現を獲得すること」と深くリンクし、この作品が、彼の遺言でもあり、生きた証でもあり、世界に残した貢献でもあることに衝撃を感じています。
映画を観た後に彼の背景を知ったことで、作品の余韻はさらに深くなり、感動と切なさが入り混じった特別な一本になりました。
4. 人に何かを「伝え残すこと」の意味
『イル・ポスティーノ』は、単なる物語以上のものを観客に届けてくれる作品です。「何かを誰かに伝え残すことの意味と価値」とは何か。それが受け取った人に与える勇気や人生への気づき、人とのつながりへの感謝。
マッシモ・トロイージの人生そのものが映画に重なっており、この作品は観た人それぞれの心に「言葉」として残り続けるものだと思います。