「自然主義文学!」居酒屋(1956) あまおとさんの映画レビュー(感想・評価)
自然主義文学!
主人公ジェルヴェーズは、男を選ぶ目がないし、フラフラ誘惑され優柔不断な面だと思う。夫クポーは仕事を失い男としてのプライドを傷つけられてしまった。気の毒ではある。人間の弱さ、迷い、不運、社会制度、貧困、酒の力。いろいろな要因が重なり、悪循環へ、どん底へ。
よくも悪くも、このような、ある時代・ある環境下の人間のありさま、営みを、淡々と客観視できるところが自然主義文学の面白さだと思う。それを丁寧な映像で見せてくれるこの手のものは結構好きだ。
ところで…
ジェルヴェーズ役は魅力的だった。可憐な彼女のクローズアップはインパクトが大きい。つい同情してしまうし、アドバイスもしたくなる。しかし…感情移入するということは、淡々と観る、という姿勢からは、ずれていくと思う。インパクトが大きい分、どこに鑑賞の軸足をおいたらよいか戸惑が生まれる。その点、少し中途半端に感じる面はあった。
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