「ラストシーン、なぜか頷いてしまっている自分がいました」居酒屋(1956) Jolandaさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストシーン、なぜか頷いてしまっている自分がいました
原題が『ジェルヴェーズ』であることに、まず感激。
ハタチの時に、原作を読みました。
…ということはもうだいぶ時間が経っているので、だいぶ内容を忘れていました。
まず、駆け落ち同然で一緒になり、二人の子をなしたランチエが、中盤からジェルヴェーズにしつこく絡んでくる(っていうか旦那のクポーがおかしいんだけど、なぜだか間借りという形で家に住みつく)っていう、物語の核になる部分がすっぱりと記憶から抜け落ちてました(汗)
屋根職人のクポーが酒が弱くて、しょっちゅうカシスばかり呑むので"カデ・カシス"とあだ名されていたこと。鍛冶職人のグージェと空き地みたいな公園にいて、でも職人肌のグージェはキホン寡黙なので、黙ったままタンポポを摘んではジェルヴェーズの(空の)洗濯カゴに投げ入れ、ジェルヴェーズが笑ってそれを見ている、、という、(まだ不幸になる前の)幸せなひととき。そして、ついつい気合の入ったジェルヴェーズが、グージェのYシャツの襟に糊をきかせ過ぎて、彼の厳格な祖母?に嫌味を言われて赤面するシーン。そういう、ディテールは覚えてたんだけど。
残念ながら、この辺は映画ではカットされてました。
ランチエ役とクポー役の俳優の顔が似てる、、 グージェはイメージ通りかな。ヴィルジニーという性悪女の存在も、すっぽりと抜け落ちてました(笑)
現代だとネットでサイコパスと謗(そし)られそうなレベルの性悪。 この人、ただ人の幸せ壊したいだけなんだよね(洗濯場での刃傷沙汰という遺恨こそあれ)…こわやこわや。
ランチエはくっそタラシ、クポーは酒浸りで鈍感、、、ただ、クポーは女房とグージェの仲を勘繰ってるフシがあるというか、少なからず嫉妬してそうなんだよなぁ。
脚の怪我とか男運の悪さとか、わかる~って思いながら読んだなぁ、ハタチの頃。
もっと自己主張しろ!ってグージェがジェルヴェーズに言うシーンもあるけど、ジェルヴェーズは自己主張が弱いというよりは、ランチエに弱いのよね(言い換えれば「ダメ男と分かっているのに惹かれる男」に弱い)。
ランチエが居候になって関係が再燃しちゃう辺りはもう読んでて恐ろしかったわ、、
ジェルヴェーズの誕生会。立派な七面鳥?の一片にかじりつきながら、恥ずかしそうに目配せし合うジェルヴェーズとグージェ。嗚呼、懐かしい…! 幸せなのは本当、この辺までね。
娘のナナが映るたび、「あぁ、『ナナ』も読まねば…(そして観ねば…)」という思いが沸々。 そしてラストシーン。確か、原作でも『居酒屋』のスピンオフ『ナナ』の予告的な文章があった気が。本編でスピンオフ予告って、格好いいし、現代的。
そのスピンオフ予告を彷彿とさせるラストシーンが、素敵でした。