生き残った者の掟のレビュー・感想・評価
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「暗黒街出身の経歴から小説と脚本で名を馳せた家ジョゼ・ジョヴァンニの初監督で、力足らずな面もあるが不思議な魅力に満ちた
ビデオでは何度か鑑賞して原作も読んだが、今回は新宿K's cinemaのフィルムノワール映画祭にて
初めて見た時は、原作者でもある小説家ジョゼ・ジョヴァンニの初監督なので、テンポも悪くて演出も下手だと思っていたが、見返すと映画としてのエモーショナルな面も散りばめられており、逆に他よ欠点が気にならなくなり始めたのと、監督のやりたい部分と力足りずのところが浮き上がるスルメ🦑のような味わいの作品だと思う。ロバの語りはやはりヘンだけど
(技術面でザブの監督がいるらしいが🤔)
同じ原作の映画化でもあるロベール・アンリコ監督の名作『冒険者たち』は、原作を解体して別物になっているが、こちら作者のアンリコ版への不満により原作に忠実で、全体のテイストが違うので、リノ・ヴァンチュラより若いミシェル・コンスタンタンの風貌も作品にハマっていて、風光明媚で険しい山並みのコルシカ島の景観を、9月から10月末にかけて存分にロケーションしている撮影も改めて素晴らしい。
日本で唯一ソフト化されたビデオ版はスタンダードサイズにする為に左右の画面がトリミングされているので、35mmフィルムでみるとフル画面の情報量に改めて驚く部分もあり新しい発見もあった。
今回上映された35mmプリントは、配給がケーブルホーグなっているので80年後半に公開された時のフィルムと思うが、2019年に関西で上映された時に見た方に聞くと傷と音飛びが気になったとあったが、今回見た分には割と良好で問題ないと思う(ビデオ版と変わらない印象だがビデオはスタンダードサイズの収録)
この翻訳字幕も良いのでこのプリントをBD化して欲しい。
この作品などもそうだが、レジスタンス活動や暗黒街出身の経歴があったとされるジョゼ・ジョヴァンニ作品に通底する男たちの掟と生き様や裏切りが見れるが、晩年に暴かれたジョゼ・ジョヴァンニの真実を知ると彼が、本当はこうありたい!と夢みた願望や贖罪が、作品に反映されているのだろうか?と思わずにはいられない。
余談
今回見直して思ったのだが、この作品はリドリー・スコットの『ブレードランナー』に影響を与えているのでは?と思う部分が散見されている。
屋敷の閉じ込めらていたエレーヌがスタンに連れ出されて森の中を車で走る場面は、劇場版のラストにデッカードとレイチェルが車で新緑も森を走って場面(後の監督バージョンではカットされた)にそっくりで、高い渓谷の細い山道を岩にへばり付きながら登る場面や海辺で庭師と決闘する場面は、ロイ・バティーとの対決シークエンスに結構酷似してる。
スタンが撃たれた指を直す場面とデッカードが折られた指を直す場面なども非常に似ている点が多い。
ちなみのこの辺の場面は撮影も演出も決まっていてとても良い。
カットの撮り方も参考にしてようにみえるが、こんな楽しみもありだと思う。
リドリー・スコットの代表作でもある『エイリアン』はSFファンの間では、イタリア製SFホラーのパンパイヤの惑星やアメリカのSFホラー『恐怖の火星探検』や『遊星よりの物体X』(脚本のダン・オバノンも確かそう言っていた)などを、かなり参考に作られていると言われており前者は、イタリア映画界で撮影監督として慣らし映像派監督としても名高いマリオ・バーバが手掛けて宇宙人側の美術面などにも影響があると思う。(オチも面白い)
余談の余談
ロベール・アンリコ監督の『追想』(1975)を見た時も、同時期に見たアメリカ映画の『ダイハード』に酷似した展開になっており、もちろん年代的に逆なので何らかの影響を受けているのでは?思っていたが、SNS時代になって同じ事をツイートなどしてる人がいて我が意を当たりである。
同じ原作本からこの映画と「冒険者たち」が生まれた
こちらのバージョンは、作者自らの映画化作品。
「冒険者たち」を観てからかなり時が経った後に、文庫本の「生き残った者の掟」を読み、更にその後に制作から随分と年数が経ってから我が国でも小劇場で公開の運びとなったという経緯でやっと鑑賞を遂げた思い出がある。
青春映画的な「冒険者たち」とは随分と毛色の違う作品になっている。
ちょっとミステリアスな感じのハードボイルド物っぽいが、独特の雰囲気というか、テーマ(題材)というか、観た当時の印象では、なんとも掴みどころの無い作品という印象だったが、なんか、もう一度観てみたいと思う映画の一本です。
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