「相互扶助の精神が描かれている」怒りの葡萄 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
相互扶助の精神が描かれている
今作はアメリカ史を解説する書籍で簡単に紹介されていたので観てみた。警察や資本家の権力に抗い、力強く生きていく民衆の姿をリアリティ高く描いた良作だと感じた。
舞台は1930年代だから世界恐慌の影響も大きい時代。さらに文明も未発達なため、仕事の多くは力仕事。仕事を選んでいては生きていけない。やりたくない仕事を消去法で消していって今の仕事を選んだ自分とは対照的で、この時代の庶民の大変さが強く伝わってきた。
大変な時代でも手を取り合う、民衆の相互扶助の精神も描かれていると感じた。その中でも特に印象に残ったのは、飲食店で店員の女がキャンディの本当の価格を言わずに安価に売るシーン。同情するような言動を見せる訳でも無く、さり気なくキャンディを安価に売る彼女。それを見た他の客が釣り銭を置いていく。自分のことより他人のことを優先する彼らの姿が、粋な態度に感じられた。
普通余裕が無いとイライラしがちだが、そういうときだからこそ他者の気持ちを考えることを忘れてはいけない。人との関わり合いの中で生じる温かさを感じられる良い映画だった。
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