劇場公開日 1952年6月19日

「人間として大人になるということの普遍性」硫黄島の砂 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人間として大人になるということの普遍性

2019年8月10日
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硫黄島の戦いは太平洋戦争に於いて米国が日本に王手をかけた戦い
この島を失えば日本本土は縦横無尽に空襲を受け火の海となってしまう
それほど重要な戦いで日米が死力を尽くして激突した
だからクリント・イーストウッド監督作品にも取り上げられたほどだが、やはり本作に尽きる
というよりイーストウッド監督の硫黄島の2作品は本作があってこそのスピンオフ作品であるとすら言える

超有名な星条旗の掲揚写真を再現してみせるシーンの見事さはそれまでの登場人物全ての苦悩はここに結実し昇華したというシンボリックなシーンで余りにも見事だった

中盤のタラワの戦いはその前哨戦で余りの損害の大きさに米軍が驚愕した戦いでこれも有名な戦い

本作はこの二つの戦いを描くが、史上最大の作戦等の戦記映画とは全く異なる
戦況の推移などは全く描かれない

描くテーマは冒頭のタイトルバッグでsemper fidelis(常に忠実)のモットーを頂く合衆国海兵隊の紋章を背景に流れ、またエンドロールの時にも流れる合衆国海兵隊の隊歌の歌詞の通り、どのような困難にも耐え、兵士個々の悩みや問題も乗り越えて米国の理想を達成するのだといことだ

確かに表面的にはこのような紋切り型で評価されるだろう
しかし本作の意義は政治性の論議ではない、人間として大人になるということの普遍性なのだと思う
子どものような甘えた個人主義を乗り越えて責任を果たす大人になれということ
ラストシーンでのトーマスとコンウェイが成長した姿こそが本作のメッセージだ

軍曹というのは会社でいえば主任程度
年上の万年平社員や新入社員や派遣さんやパートさん、バイト達を率いて上から落ちて来る無理難題をなんとかやりくりして辻褄合わせていく
もちろん日々の目標予算は高くなかなか達成できない
人員不足は深刻でシフトが回らない
部下達も気のいい奴もいるが生意気で反抗的な奴もいる
本人の為を思って厳しく指導や注意、怒ったりもするが、やればやるほど部下からは慕われない
今ならパワハラの心配もしないといけない

もちろん戦争なのだからミスは即座死に直結する
本人だけでなく仲間も巻き込むのだ
会社の主任とはレベルが違う
だからその重圧はどのくらいなものなのだろう
軍曹だけでなく兵士達もしかりだ

それでもこの平和な日常の日々の中で、会社でこのような立場に今いる人、その職位の経験を積んだ人はもちろん、その部下の立場にある人など様々の立場でたくさん共感できるシーンがとても多い
こそが普遍性を持った映画なのだと思う

ジョン・ウェインは正にはまり役だった
今でいうシングルマザーとの出会いのエピソードは心に残る名シーンだ

戦い殺される相手は私達の祖父や曾祖父だ
このような戦いを経て私達は21世紀の今平和な暮らしがあるのだということは忘れないでいたい

2018年、陸上自衛隊は水陸機動団という、自衛隊版の海兵隊を設立した
フィリピンや米国での海外演習では、合衆国海兵隊との共同訓練も行っているというニュースも聞く
このような死闘を繰り広げた両国がいまでは肩を並べて訓練をする
それほど時は流れたのだ

戦争映画の枠を超えた名作だ
そして海兵隊とは何か、何故今の日本に必要のなのかを知ることができるだけでも本作を観る意義はある

あき240