「【“総てを手に入れるために、若き女優の卵が仕組んだ事。”今作は、大女優ベティ・デイヴィスの演技と対等のと、イヴ・ハリントンの演技に度肝を抜かれる作品であり、ラストも秀逸なヒューマンホラーである。】」イヴの総て NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【“総てを手に入れるために、若き女優の卵が仕組んだ事。”今作は、大女優ベティ・デイヴィスの演技と対等のと、イヴ・ハリントンの演技に度肝を抜かれる作品であり、ラストも秀逸なヒューマンホラーである。】
■新進の女優、イヴ・ハリントン(アン・バクスター)は、アメリカ演劇界最高の名誉であるセイラ・シドンス賞に輝いた。
大女優マーゴ・チャニング(ベティ・デイヴィス)に憧れの目を向けていた”無垢な少女”が、満場の拍手を身に浴びるにまでなる。
が、実はその過程で、イヴは恩人である大女優及び自分をマーゴに紹介したマーゴの友人カレン(セレステ・ホルム)を欺き、数々の策謀をめぐらせていた。そして、その中にはカレンの夫、ロイド(ヒュー・マーロウ)との結婚も視野に入れていたのである。
だが、評論家のアディソン・ドゥイット(ジョージ・サンダース)だけは、彼女の本当の出自を調べていたのである。
◆感想<Caution!内容に触れています!>
・今作は、ベティ・デイヴィスを観るために鑑賞したのだが、イヴ・ハリントンを演じたアン・バクスターの、”何も知らない、初々しい迷い子の羊の様な顔をした”序盤の姿と可憐な声と、物語が進むにつれ、大女優マーゴの座を狙う狡猾な姿を演じる際の、眼付と低音の声のの違いに驚く。
アン・バクスターは、「私は告白する」「十戒」で観ているはずだが、記憶には残っていない。むしろ後年の刑事コロンボの”偶像のレクイエム”で往年の大女優を演じた姿の方が記憶にあるのだが、成程、あの作品は今作から着想を得たのではないかと思ってしまった程の演技である。
・この作品は、構成も凄く、冒頭、イヴ・ハリントンが初々しい態度でセイラ・シドンス賞を受賞するシーンから始まり(その際の、マーゴ・チャニング及びカーラの彼女を見る複雑そうな眼に”この作品は、マーゴ・チャニング演じるベティ・デイヴィスが、イヴ・ハリントン演じるアン・バクスターをネチネチ苛める映画かな。)などと、ミスリードされるのであるが、その後の徐々に本性を現していくイヴ・ハリントンの豹変演技が、正にホラーである。
・一方、マーゴ・チャニングを演じるベティ・デイヴィスの、齢40歳になり容色の衰えを自覚しつつ、大女優の座を守らなければいけない葛藤する姿も、勿論見応え充分なのである。これは、今でも同じ事が世界の名女優が面している問題であり、それをベティ・デイヴィスが演じると、説得力が半端ないのである。
・観る側にイヴ・ハリントンの“総てを手に入れるために、若き女優の卵が仕組んだ事”が、総て鑑賞側に晒された後に、冒頭のシーンに戻り、マタマタ、イヴ・ハリントンを演じたアン・バクスターは”何も知らない、初々しい迷い子の羊の様な顔”で、マーゴ、カレン、ロイド、脚本家でマーゴの恋人ビル(ゲイリー・メリル)に感謝の言葉を、目をキラキラさせて述べて行くのである。凄いなあ、怖いなあ。
<この物語は、これで終わりではない。
再び素に戻ったイヴ・ハリントンが控室で疲れた顔で座っていると、そこにキラキラした瞳の少女フィービー(バーバラ・ベイツ)がいて、”憧れているのです。貴女みたいになりたいのです。”と驚くイヴ・ハリントンに告げると、現れたトロフィーを持ったアディソン・ドゥイットが、シニカル極まりない表情で、チラリとイヴ・ハリントンを見ながら、”彼女を見習うと良いよ。”と言って扉を閉めるのである。
イヤー、凄いですねえ、怖いですねえ。
歴史は繰り返す事を示唆する如き、終わり方。
今作の監督、ジョセフ・F・マンキーウイッツの他の作品も観たくなってしまったぞ!>