「イマジナリーフレンドと過ごした季節。」E.T. とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
イマジナリーフレンドと過ごした季節。
子どもの自死やいじめ、不登校等に関心を持っている人には、ぜひ観て欲しい。
有名な映画なのにやっと初鑑賞。
地球に取り残された宇宙人を子どもたちが大人の手から守り、故郷へ帰すアドベンチャーと勘違いをしていたから、初見では肩透かし。
特に、『ジュラシック・パーク』を鑑賞した後だったので、アドベンチャー度が足りないと。
でも、エリオットとE.T.、マイケル・ガーティを中心とした、”交流”の物語だったのね。
情感豊かなしっとりとした話になっている。
相変わらず、映像作りがうまい。
導入はすぐに実体を見せないじらしを多用。人を逆光で撮したり、部分的に撮したり、重要アイテムのように焦点を当てて何度も撮したり、これから何が起こるのかと煽る。
E.T.が姿を見せてからは、ひっくり返したおもちゃ箱。USAの子どもって、あんなにおもちゃを持っているの?家にビリヤード台にブランコまであるよ。
ぬいぐるみに囲まれたE.T.。いろいろと飾り付けられたE.T.。これが不思議とかわいい。
数々のコントシーンで笑いを誘う。
そして、物語の”転”では不気味な大人たちを投入。これでもかという不気味かつ、大仰な(笑)のある登場のさせ方。『ブルース・ブラザース』を思い出してしまった(笑)。(監督出演されてた)
その後の展開は突っ込みどころ満載だが、心地よい。音楽が伸びやかで、どこまでも羽ばたいていけそう。
ラストは気持ちよく涙を流して、余韻に浸りながらエンド。
そして、DVDについていた監督のインタビュー等の解説を見た後、再鑑賞。
監督曰く、『未知との遭遇』の続編なのだそうだ。
だが、未知なるものへの高揚感で突っ走った『未知との遭遇』に比べ、華やかさ等は薄れ、もっと、地に足就いた、しっとりとした物語となっている。”Home”がキーワードだからだろうか。主人公の最後の選択も違う。また違った余韻が残る。
監督曰く、監督の少年時代の、目に見えぬ友達・イマジナリーフレンドの話なのだそうだ。
イマジナリーフレンドが宇宙人なんて、『未知との遭遇』の監督らしい!!ツボってしまった(笑)。
監督のご両親も離婚されて、母・妹三人と暮らしたあの頃の、寂しかった思い…。エリオットに投影。
そうすると、監督が少年時代にしたかったこと満載?ビール、蛙、キス、宇宙との交信、空中遊泳…。
鑑賞前は、主人公がギャングエイジ世代だから、学校の友達とE.T.を守るのかと思っていた。学校に通うのに、スクールバスが必要なほど、広範囲に家が点在するから、学校の友とではなく、兄弟の冒険なのか?”Home”がキーワードだからか。兄には監督の願望が投影されているのか?
キーズは理想の父像?
E.T.のデザインの例としてデザイナーに監督が渡したのは、年老いた男性たちの写真だそうだ(特に目のあたり)。かわいいだけでなく、どこか懐かしく身近な存在にE.T.が見えるのはそのせい?久しぶりに、田舎のおじいさんに出会ったような安心感…。
これは私の妄想で、監督の意図ではないと思うが、
母や大人の描き方も唸ってしまう。
母の周りをE.T.が動きながらも、ガーティが母にE.T.を紹介しようと話しかけているのにも関わらず、まったく気が付かない母。初見では単なるギャグのシーンと思っていたが、家庭内でよくある親子関係を現しているなあと唸ってしまった。子どもを愛し、子どものために日々の作業に追われる母。子どものためにやっているのに、肝心な子どもの話を聞かずに突っ走る母。こんな関係ばかりだと、やがて子どもは何もしゃべらなくなる。意思の疎通が図れなくなる。
後半出てくる大人たちも同じ。エリオットとE.T.を助けるために必死なのだが、誰も、エリオットとE.T.の言葉に耳を傾けない…。自分たちの”良かれ”と思うことを押し付ける…。
だから、最終的に、E.T.を助けるのは…。
監督曰く、『ジョーズ』等のような映画ではなく、”人の内面”を描く映画に挑戦したとのこと。
冒険活劇的な部分も大きいため、どっちつかずになったきらいはあるが、だからこそ、子ども心に楽しめ、出会いと別れというほろ苦さが残る映画になった。
DVDには、他にもE.T.の声についてとか、ヨーダについてとか、子役は撮影現場で勉強させられるとか、監督の演技指導のさわりとか、いろいろ知ることができておもしろかった。